さくらももこさん死去

 小学3年生のまる子は、お調子者であわてんぼう。温かな家族や個性的なクラスメートに囲まれ、毎回にぎやかな出来事に遭遇する▲漫画やアニメでおなじみの「ちびまる子ちゃん」。作者のさくらももこさんは1965年生まれ。自身を投影したまる子の目を通して、70年代の子ども世界を生き生きと描き出した▲漫画作品として注目されたのは80年代後半。ほのぼのした日常生活の描写は同世代のノスタルジーを誘うと同時に、幅広い世代を引きつけた▲平成に入るとテレビアニメ化され、さくらさん自身が作詞したテーマ曲「おどるポンポコリン」も大ヒット。人気はお茶の間に定着し、昭和の一時期を描く作品が平成の長寿番組となった▲さくらさんはエッセイストとしても活躍、「もものかんづめ」などのベストセラーを生み出した。子ども時代に誰もが体験するさまざまな出来事を、記憶の玉手箱に大切に保管し、誰もが共感できる絵や文章でユーモラスに表現できる才能の人だった。享年53歳。その早すぎる死を惜しむ▲まる子憧れの歌手で70年代の歌謡界を支えた西城秀樹さんも、5月に惜しまれつつ亡くなった。まる子が生きていたあの時代がどんどん遠ざかっていることを実感する。気が付くと、平成という時代は、残り8カ月余りとなった。(泉)

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