所詮、飲食店のおやじにLINEと本田圭佑が出資!?

これは便利!?「こんな飲食店があったらいいのにな!」

どんなワガママなリクエストにもすぐさま応えてくれる飲食系Webサービスに、あのLINEと本田圭佑氏が出資。〝所詮、飲食店のおやじ〟のアイデアに一体なぜ!?

■飲食店のおやじにLINE Venturesと本田圭佑氏のKSK Angel Fundが出資!

極上のラムチョップを提供する飲食店「ウルトラチョップ」のオーナーである高岳史典氏。

私も三回ほどお邪魔させてもらったことがあるが、ラム肉の常識を覆されてしまった。これは旨い。絶品である。とはいえ、〝ラム肉の常識〟に精通するほど、私はラム肉のことを知らない。

2013年、1号店を中目黒にオープンさせて以来、今や麻布十番、神楽坂、恵比寿、京都と4店舗を構えるまでに成功。が、当の本人は「所詮、飲食店のおやじですよ」と、控えめだ。

ところで、私の知人には飲食店オーナーが多いのだが、ほぼその全ての男性が、この〝所詮、飲食店のおやじ〟を自虐的な意味を込めてよく口にする。

「私なんか、所詮、飲食店のおやじですから」

では、女性はどうか。飲食店を経営する女性オーナーの場合、自身の職業をこう語ったりするのだろうか。

「こんにちは。所詮、飲食店のお袋です」

いや、そんなことはない。女性オーナーの場合、大抵「飲食店の女将をやっています」と答える。〝おやじ〟の対義語といえば本来〝お袋〟であるハズなのに実に不思議だ。

話がそれてしまった。そんな〝所詮、飲食店のおやじ〟である高岳氏に、LINE株式会社の子会社であるLINE Ventures株式会社が出資した。

さらにあの本田圭佑氏が手掛ける個人ファンド「KSK Angel Fund」からも出資を受けることに。

〝所詮、飲食店のおやじ〟に一体これはどういうことなのか!?

実は高岳氏。華麗かつ波乱に満ちた経歴の持ち主である。

■〝所詮、飲食店のおやじ〟の正体

京都大学を卒業後、大手メガバンクに就職。その後、外資系のマーケティング会社やコンサルファームなどを渡り歩き、行きついた先が、あの堀江貴文氏が去った後のライブドア。そこで激動の5年を過ごすことに。

そしてようやく手にした社長の椅子。外資系コンサル企業の雇われ社長に就任するも、あっさりとその地位を手放す。

こうして〝所詮、飲食店のおやじ〟に収まった。元々、大のグルメ。さらに〝人〟との出会いが大好物という高岳氏。オーナーであるが積極的に店に顔も出し、〝お客様と触れ合うのが最高の喜び〟と語る。その表情から「飲食業界に落ち着いて良かった」という満足感がうかがえる。

だが、愛情が深いだけに飲食業界を取り巻く環境に不満もある。

「この業界、集客の術が本当に限られています。そのため、旨くて質の良いサービスを提供したとしてもオープン当初は軌道に乗らず苦境に立たされているケースが多く、残念です」

オープンから間もない飲食店が集客の頼りにするのが、グルメ系検索サイト。だが、お店の中には集客の実感もないまま、高額の月額課金に迫られ経営の首を絞めるケースも。

一方でユーザー側も、お気に入りの飲食店をグルメ系検索サイトで探し当てるのは至難の業。今や大量の店舗情報で溢れ、多すぎて辿り着けない〝グルメ難民〟が巷に溢れる。

『この状況をなんとかしたい』

これまでのキャリアで培ったノウハウの引き出しが開いた。高岳氏は、この飲食業界とユーザーが抱える問題を解決に導く、ある画期的サービスを思いつく。

アイデアだけではない。彼には行動力もある。その構想を実現化すべく連日、資金調達に走った。

こうして、〝所詮、飲食店のおやじ〟である高岳氏に、LINE株式会社の子会社であるLINE Ventures株式会社。さらにあの本田圭佑氏が手掛ける個人ファンド「KSK Angel Fund」からの出資が決まった。

一体それはどんなサービスなのか!?

■ユーザーの〝こんな店に行ってみたい〟というリクエストと飲食店の空席をテクノロジーでマッチング

最初に高岳氏からそのサービスの概要をお聞きした時は震えた。これはすごい。縁あって、そのサービスローンチ記者発表の総合演出を私が任せていただくことになった。

2018年8月28日、記者発表当日。会場となったのは、原宿の喧噪を忘れさせてくれる別世界。閑静な緑地に佇むフレンチレストラン、KEISUKE MATSUSHIMA(ケイスケマツシマ)。そこには、多くのメディアが集った。

発表会を行ったのは、株式会社Bespo。高岳氏が立ち上げた会社だ。出資者の一人である本田圭佑氏からはこんなVTRコメントが寄せられた。

『飲食店の抱える問題をテクノロジーで解決する、という高岳さんの思いとアイデアに感銘を受け、今回出資をさせていただくことに決めました』

さらに表舞台には滅多に顔を出さないLINE株式会社 取締役 CSMO、舛田淳氏も登壇。記者発表に華を添えた。

本田氏も絶賛する飲食業界の様々な問題を解決するサービス。その概要はこうだ。

ユーザーは、ビスポのLINEアカウントを使って、希望のリクエストを選択。フリーワードも打ち込める。するとすぐさま、その内容が加盟店に飛び、予約を受けたい飲食店が立候補。双方の条件があえば、予約成立となる。

サービス名は、『ビスポ!検索のいらないチャット飲食予約』。

文字通り、検索のいらない次世代コミュニケーション型のマッチング支援サービスである。例えるなら〝心強いグルメな友人ができた〟とったところ。そんな仮想友人とのLINEのやりとりで〝自分のニーズを満たす〟最高のお店を紹介してもらえる。

しかも従来型のグルメ系検索サイトでは飲食店の評価しかできなかったが、〝ビスポ!検索のいらないチャット飲食予約〟では、ユーザーの評価も可能に。飲食系のプラットホームでは初の試みだ。

さらに月額課金がない、というのも飲食店にとっては何より嬉しいポイントである。ユーザーの利便性はもちろん徹底的に飲食店目線に立った画期的サービスといえる。

2018年8月時点では、東京・港区と中央区の約50店舗が「ビスポ」のこのサービスに参加。年内には東京全域・神奈川までエリアを拡大し、1,000店舗、ユーザー数は一万人を目指す。

柔らかな語り口とロジカルなトークでメディアを魅了する高岳氏。記者発表は盛況のうちに終了。

■苦境に立った時、ここぞという時に勇気をもらいに出かける力旅

最後に、高岳氏にこんな質問をぶつけた。

経営者や著名人が苦境に立った時、あるいは〝ここぞ〟という一世一代の勝負を控えた時にパワーをもらいに出かける神フライトである。

あなたにとっての力旅は!?

「京都ですね。特に先斗町には思い入れがあります。この町だけがもつ独特のオーラにはやはり魅了されてしまいます」

人生の岐路に立たされた時、高岳氏は決まって京都に出かけるという。

「歴史を感じるこの街並みを見ていると新しい発想が浮かぶ。〝旧〟という古い体制があるから、それを比較対象に新たなアイデアが湧くんです」

テクノロジーで合理化を声高に叫ぶ今どきの経営者の中には古い概念を否定する人も少なくないが高岳氏は違う。基本があってのアレンジ。オマージュである。古きよき価値観をリスペクトしつつ、新たな概念を創出する。

「飲食業界の旧態依然とした体制の中にも伝統や格式など、見習うべき点も多い。そこは継承しつつ進化させていきたいですね」

少し照れた表情を浮かべ、高岳氏はそう最後に語った。

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