東京都の防災と女性シンポに約430人 国崎信江氏と浅野幸子氏、備蓄や避難所など語る

ディスカッションの様子。左からコーディネーターの国崎代表、小池知事、優木さん、浅野共同代表

小池知事「備えよ常に」

東京都は29日、「防災に関する都民シンポジウム『防災』×『女性』」を新宿区にある都庁第一本庁舎の大会議場で開催。433人が参加した。小池百合子知事のほか、株式会社危機管理教育研究所の国崎信江代表、減災と男女共同参画 研修推進センターの浅野幸子共同代表、タレントの優木まおみさんが出演。「女性版東京防災」こと3月から無料配布されている「東京くらし防災」を用いたディスカッションなどが行われた。

小池知事は冒頭、6月の大阪北部地震や7月の平成30年7月豪雨などをふまえ、「最近、災害は忘れる前にやってくる」と災害の頻発について触れた。そのうえで「防災への取り組みは難しくはなく、習慣と行動に工夫を加えることでできる」とし、「『備えよ常に』の精神を心に刻んでいる」と災害への備えの重要性について語った。

その後、都総務局総合防災部の有金浩一部長が都の防災事業について説明。大阪北部地震で帰宅困難者対策、平成30年7月豪雨ではハザードマップやホームページなどによる早くからの情報収集と早期避難が課題になった旨を説明。発災時の情報発信として、東京都防災ホームページで災害時情報の入口をわかりやすくしたことのほか、東京都防災ツイッターや3月から提供されている「東京都防災アプリ」の紹介も行われた。今年度から2020年度までの防災事業計画「セーフ シティ東京防災プラン」が策定されているが、今年の災害頻発をふまえ防災事業の緊急総点検を実施し、9月上旬をめどにとりまとめることも報告した。

家庭内ルールが危機管理の基本

ディスカッションでは国崎代表がコーディネーターを務めた。国崎代表は自身が編集委員を務めた「東京くらし防災」から特に日常食べ慣れたものを少し多めに買い、消費して補充を繰り返す「日常備蓄」の重要性を紹介。発災時に被災者が多すぎて避難所に入れない可能性があることから「できれば自宅ですごすのが理想」と述べた。また「国崎家の防災マニュアル」と題した、連絡方法や待ち合わせ場所を定めた家庭内ルールを紹介。小池知事も「家族といざという時の対応を決めるのは危機管理のベース。国崎家はモデルケースだ」と評価した。

浅野共同代表は男性が住まいのある地域外に出勤する平日昼間に発災した場合、「地域に残った人は女性が多くなる可能性が高い」と説明。育児や介護を行っている女性も多いことから、地域や避難所において女性のリーダー的役割が重要であることを説明した。

2児の母でもある優木さんは離乳食など子ども用の食料やおむつなどの備蓄の重要性や、だっこひもをすぐに使える場所に置くことなどについて触れ、「おむつや服はすぐに子どもが大きくなってサイズが合わなくなることがある」と注意点を語った。

小池知事はほ乳びんや湯が不要な乳児用液体ミルクについて、2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震で活用されたことを紹介。厚生労働省が液体ミルクの基準を決め、国内生産が可能となることから「来年秋には購入可能になるよう後押ししたい」と述べた。都では豪雨被災地の岡山県倉敷市と愛媛県に液体ミルクの支援を行った。

避難所でのプライバシー確保や性犯罪の防止について浅野共同代表は防犯ブザーや目隠しになる大判ストールなどの携帯を呼びかけたが、「大事なのは環境整備。気づいたことについては声をあげ、仲間を作って改善につなげること」と説明。小池知事は「3月に都の避難所運営のガイドラインを改訂した。男女でリーダーを務め、相談しやすい環境づくりをしたい」と述べた。

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「乳幼児用液体ミルク、国内製造可能へ」
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(了)

リスク対策.com:斯波 祐介

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