30歳齊藤、不退転の決意 9月バンタム級王座決定戦

 ボクシングの花形ジム(横浜市都筑区)に所属する日本バンタム級2位の齊藤裕太(30)=川崎市中原区出身=が9月1日、同級王座決定戦で同級4位の菊地永太(真正)と激突する。「これがラストチャンス」と力を込める齊藤は、不退転の決意で大一番に全てを懸ける。

 それは「奇跡」と言っても大げさではなかった。今回の王座決定戦が決まった際、齊藤は「自分がやるのかって。本当のことかどうか信じられなかった」と振り返る。

 前王者の赤穂亮(横浜光)が1月の防衛戦を体調不良で棄権しタイトルを返上して以降、同級王座は空位になっている。その後の王座決定戦も選手の計量失敗やけがで延期が繰り返された。

 齊藤は昨年8月に赤穂とのタイトルマッチでダウンを奪うなど善戦したものの、9回TKOで涙をのんだ。「負けたら辞める」覚悟だったが、「自分はあの試合でもっと強くなれると思った」と再び立ち上がった。

 しかし、今年2月の再起戦でまさかの敗退。「心が折れた。もう自分は無理だと思って引退を決めた」。3月末、花形会長にも意思を伝えたが、直後に今回の試合の話が舞い込んだ。願ってもない再びのチャンスにすぐ「やる」と決めた。

 祖父の代からの家業である川崎市内の金属加工会社で働きながら、練習を続けてきた苦労人。18歳の時に元世界王者・辰吉丈一郎の自伝を読んでプロボクサーに憧れジムの門をたたいたが、あまりの練習の過酷さに1年ほどで辞めた。

 だが、ボクシングへの思いは捨て切れず、知人の勧めもあって約3年後に再びリングへと戻った。3児の父でもあり、「この先チャンピオンになれば三男(1)にも見せられる」と夢を語る。

 拳にバンテージを巻く目に闘志がみなぎる。「ボクシングの神様が取れと言っているんだと思う。どんな形でもいい、何が何でも勝つ。これがラストチャンス」。自慢の強打で未来を切り開いてみせる。

 ◆さいとう・ゆうた 花形ジム。2012年スーパーフライ級全日本新人王。中学までは野球部で投手、外野手として活躍。日出高(東京都)卒業後、ジムに通うも1年で挫折。しかし、夢を諦めきれず22歳から再びボクシングを始めた。破壊力ある右を持つハードパンチャー。22戦10勝(7KO)9敗3分け。川崎市中原区出身。30歳。

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