スー・チー氏の平和賞、剥奪できるのか

By 太田清

ミャンマーの首都ネピドーで演説するスー・チー氏=7月(AP=共同)

 ミャンマーのイスラム教徒少数民族ロヒンギャ迫害問題で、事実上の国家指導者であるアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相への批判が高まる中、ノーベル平和賞の選考主体、ノルウェー・ノーベル賞委員会のニョルスタッド事務局長は29日、スー・チー氏から平和賞を剥奪することはないと強調した。英メディア、インディペンデントなどが伝えた。 

 ニョルスタッド氏は「ノーベル賞は過去の業績により与えられる。スー・チー氏は平和賞が授与された1991年までの民主化と自由への闘いの功績から受賞したもので、ノーベル賞の規定は賞の剥奪を認めていない」と述べた。 

 スー・チー氏からの平和賞剥奪については、レイスアンデルセン委員長も昨年、「受賞者が賞の授与後、何をするかを監督したり監査したりするのはわれわれの仕事ではない。受賞者自らが自身の評価を守らなくてはならない」と指摘していた。 

 国連人権理事会が設置した国際調査団は27日、迫害行為へのミャンマー国軍の関与は明白だとして、国軍総司令官ら軍高官らへの捜査と訴追を求める報告書を公表。またスー・チー氏が迫害を防ぐために「自身の地位と道徳的権威を用いなかった」と非難した。これを受け、スー・チー氏から平和賞を剥奪すべきだとの声が高まっていた。 

 スー・チー氏を巡っては、同氏が卒業した英オックスフォード大が2017年に、肖像画を撤去したほか、オックスフォード市議会が名誉市民の称号を取り消すなど、ロヒンギャ迫害問題を受けその業績を否定する動きが相次いでいる。 

 ミャンマーでは昨年8月以降、武装集団と治安部隊の衝突が激化、72万人超が難民として隣国バングラデシュに逃れた。治安部隊がロヒンギャの村を焼き打ちするなど迫害しているとして、国連は「民族浄化」とミャンマー政府を批判している。 (共同通信=太田清)

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