マイナー川崎市歌、普及へ高校生が尽力 始業チャイム採用

 川崎市立幸高校(幸区戸手本町)の生徒が、認知度がいまひとつの市歌の普及活動に取り組んでいる。生徒4人が音源を制作した市歌のメロディーが8日から富士通新川崎テクノロジースクエア(同区)の始業チャイムとして流れ始めるなど、成果が出始めている。同社からは昼時や終業時のチャイム制作の要望も寄せられ「しっかり応えていきたい」と意気込んでいる。

 川崎市歌の普及活動は、同校の林則雄教諭(52)が「郷土愛や地域貢献につながる」として、商業研究の授業で取り入れてきた。今回、同社での始業チャイムを手掛けたのは同校ビジネス教養科3年で、17歳の石川優菜さん、黒田珠友さん、平賀瑠々奈さん、植田愛美さんの4人。

 市歌は1934(昭和9)年に作られた厳粛なイメージの歌だが、市立小学校で歌唱指導が取り入れられている横浜市歌などと比べ、市民の認知度は高くない。

 同校では、2016年から3年生が普及活動に携わり、これまでに川崎市歌をアレンジした音源が市役所本庁舎や幸区役所のチャイム、JR南武線川崎駅の発車ベルに採用された。

 先輩たちの活動を発展させるため、4人は「公から民へ」の目標を掲げ、今年5月から市内企業への音源採用の働き掛けを開始。これに富士通が「生徒の活動を応援したい」と共鳴し、生徒と同社担当者との意見交換が始まった。

 音源担当の黒田さんを中心に、4人はパソコンを使って数パターンの音源を用意。初回の打ち合わせで披露したところ、担当者から「朝、元気よく仕事が始められるように」「やや短めにできないか」などの要望を受けた。試行錯誤を繰り返して32パターンの音源を用意。再度交渉した結果、鉄琴の軽やかな曲調でストレスを感じさせない約20秒間の音源が始業チャイムとして採用された。

 同社は生徒たちの活動について「素晴らしい。さらなる展開に向けて今後も活躍してほしい」と話し、昼食と終業時のチャイムも発注したという。

 石川さんは「交渉は初めてで、当初は自分の伝えたいことがはっきり言えなかったが、事前に皆で考え、しっかりと伝えられるようになった」。平賀さんも「成果が出て、感動した」と充実感を語った。「自分たちの作った音源が毎日流れるなんて、すごい」と黒田さん。植田さんは「努力が報われてうれしい」と喜ぶ。

 4人は現在、市内の別の企業のチャイムも手掛け始めている。今後は商店街のイベントで市歌を取り上げてもらえるよう企画も練っている。林教諭は「教科書のない実学に夏休み返上で取り組んだ。自分で考え、動いた経験を今後の糧にしてもらえれば」と期待している。

 ◆川崎市歌 市制10周年を記念して1934年に制作。公募した歌詞に音楽家の高階哲夫氏が曲を付けた。69年と2004年に歌詞の一部を時代に合わせて改訂した。03年に市がホームページ上で行った市歌に関する調査では、市民の認知度は14%にとどまった。市は、市有施設で積極的に市歌を流すよう呼び掛けている。

川崎市歌をアレンジした始業チャイムを制作した(左から)石川さん、黒田さん、平賀さん、植田さん =市立幸高校

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