【JFE商事ブリキセンター 新本社工場建設の狙いと展望】〈清末浩史社長に聞く〉安全性・生産性さらに向上 クリーンルームの新設も強みに

 ブリキコイルセンター(CC)のJFE商事ブリキセンター(本社・大阪府大東市、社長・清末浩史氏)は来年度上期中の稼働をめどに新本社工場の建設を進めている。同社の加工・生産拠点は、本社工場および松原工場の2カ所で、新工場は現本社工場の近隣に建設し、これに伴い松原工場は閉鎖する。投資の狙いおよび今後の展望などについて、清末社長に話を聞いた。

――現状は?

 「今年度販売量は4万トン前後になりそうで、加工量は約3万トン強となる見通し。足元はボリュームゾーンとなる18リットル缶向けの荷動きにばらつきがある。全般的に決して景気は悪くないのだろうが、塗料缶がよく利用される中小規模の工場建設案件などが上期に関西圏で低調だったことが影響しているのかもしれない」

――工事の進展状況は?

 「7月には起工式も開催し、順調に進展している。完工予定は来年4月から5月に延びたものの、建屋完工後のレベラー移設などを含め、当初予定通りに来年度上期中には操業を始められるだろう」

――改めて工場建設の狙いを。

 「一つは安全性をさらに高めること。たとえば、現本社工場からレベラーを新工場に移設することで、現本社工場の作業スペースが確保しやすくなる。今後も安全対策には重点的に取り組んでいきたい」

 「2点目は品質の向上。新工場には新レベラー、クリーンルームのほか、表裏面検査装置も2ラインに新たに導入する。特にクリーンルームは関西圏ではほかになく、強みになると考えている。食品・製造業を問わず内容物を缶に充填する場合、異物の混入を防がなければならないが、こうしたニーズは今まで以上に高まっている。このニーズに十二分に対応できるので、この点をしっかりPRし、拡販につなげたい。また、当社はJFEスチール材のブリキを拡販するCCであり、今回の投資をJFEグループとしての付加価値向上につなげられればと考えている。デリバリーはもちろん、品質面でも輸入材などとの差別化を図っていく」

 「このほか、今回の投資は工場の『集約化』という意味合いもある。松原工場は、ほぼ一般缶向けの加工をしているが、一般缶の需要は徐々に減少している。松原工場の今後については、今回の投資がなくてもいずれは検討するべき必要があったが、現本社工場はすでに工場敷地を目いっぱい利用しているので、本社工場への集約は難しかった。2工場が近接し、生産面でより連携がしやすくなる。当社が保有するレベラー数は1ライン減の3ラインになるが、生産効率を高め、年産3万6千トンを目指していく」

――印刷工程があるのも強みです。

 「印刷までを一貫生産できるのは、当社の強みの一つ。設備投資については、老朽化対応で塗装機を一台更新したので、しばらくは大がかりなものは考えていない。今後、インクジェット印刷のスピードアップなど技術革新があるかもしれない。技術動向などを見極めながら、これからの投資を考えたい」

――今後の課題は?

 「印刷だけでなく、もう一つ違う加工ができないか考えていきたい。お客様の利便性につながるような加工ができれば、当社としても付加価値が高められるし、お客様のメリットにもなる。また、ブリキだけでなく、他素材の加工もできないか検討している。JFE商事グループが関西で持っていない加工機能を手掛けられればと考えている」(宇尾野 宏之)

© 株式会社鉄鋼新聞社