【アルミ業界の将来に危機感】〈竹内正明アルミネ会長に聞く〉日本の〝ものづくり力〟が低下 「品質と収益性で競争を」

 独立系アルミ素材メーカー、アルミネ(大阪・東京両本社、社長・竹内猛氏)は、1921年(大正10)の創業。竹内正明取締役会長は業界歴58年で、アルミネの業容拡充に努めてきた。竹内会長は「アルミ業界(メーカー)の将来に強い危機感を持つ。メーカーは単に数量を追うのではなく、品質と収益性で競争すべき」という。危機感の根本的な問題などについて、話を聞いた。(白木 毅俊)

――竹内会長が懸念する、アルミ業界の将来的な危機感とは。

 「この9月で84歳になる。アルミ業界に長年携わり、業界への愛着と恩義は人一倍感じている。老婆心ゆえの率直な物言いを許してほしいが、このままではいずれ中国に太刀打ちできず、負けてしまうと危惧している。振り返れば高度経済成長期。1970年後半には『ジャパン・アズ・ナンバーワン』といわれ、日本のものづくりの力が世界的に高く評価された。当時、その技術と高度な生産性で世界トップへと昇りつめた。だが今日では状況が異なる。少子高齢化もあり、日本国内の製造業は総じて縮小の傾向にある。日本のものづくり力が、当時に比べて随分と落ちていると思う」

――具体的にはアルミ業界の何が問題だと。

 「これは単純な問題ではないが、まず是正すべきは生産・販売の数量競走がある。業界大手メーカーから中堅どころまで、いまだに数量競走を繰り返している。常々感じていることだが、多くの企業では技術より営業が先決。その結果、薄利による収益悪化という状態を強いられている。業界大手ですら、もうからない商品を旧態依然として生産している。これでは駄目で、もうからない商品は撤退しないと…。大手では利益を追求する人よりも、販売に走った人の方が出世していく。果たしてこれで良いのだろうか?技術者の数も十分だろうか?技術者のマンパワーが低下し製品レベルが落ちてきているのではないだろうか?」

 「これは私個人の提案だが、鉄鋼業界などと同様に価格を発表するようにすればどうか?東京製鉄は月に1回販売価格を公表している。アルミ業界もメーカーが販価を公表すればより透明性が高まるはずだ。銅業界も価格は明瞭。周知の通り、電気銅建値はLME銅市況と為替により決まり、日々連動している。アルミ業界は鉄鋼と銅の両業界に比べ、価格の透明性という点で遅れているように思う」

 「昨今、物流費は高騰し、人件費など諸コストも上昇している。一方で、働き方改革の視点から労働時間も以前のような長時間労働は許されない。数量競走に陥れば、業界全体が疲弊するだけだ。漠然と続けている愚を早急に改め、品質と収益性で競争すべきだと強く訴えたい。モノを多く生産して適正価格で多く売れば、利益がでる。この状態を目指すべき。数量増でも価格が安ければ、経営は成り立たない」

――アルミ関連メーカーのすべてが生産・販売面で数量競走をしているわけではないようにも思いますが。

 「それはその通り。例えば東洋アルミニウムや大紀アルミニウム工業所。この2社はグローバル企業として業容を拡充されている」

 「経営者の考え方によってアルミ業界は随分と変わっていくはずだし、是非そうなってほしい。他業界ではプロ経営者が招聘されるケースがある。そのようなことも検討して良いのでは…。アルミネでは黙々と研究開発をし、新商品づくりに取り組んでいる。それが業容拡充につながるのだと確信している」

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