「好き」のつながり

 憧れの韓国アイドルになりきろうとコピーダンスに取り組む長崎の学生サークルが、先日の本紙で大きく紹介されていた。高難度のダンスを集団でぴたりと決めると快感だろう。熱中する楽しさが伝わる▲そういえば、最近は街角で韓国アイドル風のメークやファッションをした若い女性が目に付く。白いつや肌、赤いリップ、タイトな服。韓国発のトレンドが今また裾野を広げていると感じる▲2003年に中高年層から火が付いた韓流ブームは、その後K-POP人気で若い世代に広がった。しかし李明博(イミョンバク)大統領の竹島訪問などで日韓関係が冷え込んだ12年ごろから、地上波テレビ番組で韓国の芸能人を見ることが減った▲韓国に関するヘイトスピーチが先鋭化してきたのもこの頃。「韓流は終わった」と言われることもあった▲だが、好きな芸能人の情報をネットで集めるファンにとっては、あまり関係のないこと。コピーダンスのお手本は配信動画。分からない言葉には誰かが字幕を付けてくれる。国境も時差もないネットを活用しながら、ファンは思う存分好きな対象を追い掛ける▲日本のポップカルチャーを追い掛ける韓国人ファンも、事情は同じだ。政治に着目しているだけでは見えない「好き」のつながりが、あちこちでボーダーレスに築かれている。(泉)

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