世界遺産の潜伏キリシタン施設 観光客急増 信仰と共存が課題

 「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界文化遺産登録後、構成資産の教会などを訪れる観光客が急増している。6月30日の登録の後、1カ月(7月)の観光客数は前年同期に比べて5割増えた。観光客が少なかった地域で急増している。
 県によると、12構成資産の教会などの施設を訪れた観光客は計5万8843人。前年同期比で47%増えた。元々観光客が多く訪れていた大浦天主堂や天草市の崎津教会堂を除くと2倍に増えた。
 構成資産別にみると、前年同期131人だった春日集落(平戸市)は11倍に増えて1445人。197人だった「奈留島の江上集落」(五島市)の江上天主堂は6倍超の1254人。「外海の大野集落」(長崎市)の大野教会堂は279人から930人に3倍超になった。「頭ケ島天主堂」(新上五島町)は2874人から3560人に24%増えた。
 ただ、観光客が訪れるのはカトリック信者の祈りの場。「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産インフォメーションセンター」(長崎市出島町)は教会見学を希望する人がインターネットなどで事前連絡する制度を運用。観光客の7割が活用しているが、個人客の利用が課題になっている。
 また、潜伏キリシタンの信仰の価値を伝えるのに、ガイドの役割は大きい。現時点ではガイド不足は顕在化していないが、今後は12の資産全体の説明ができるガイドを養成することが求められるという。
 県世界遺産登録推進課の担当者は「住民の祈りや生活の場を守るのが前提だが、より多くの人に訪れてほしい」としている。

観光客でにぎわう「頭ケ島の集落」の頭ケ島天主堂=新上五島町友住郷
観光客が訪れる大浦天主堂=長崎市南山手町

© 株式会社長崎新聞社