【津川哲夫の私的F1メカ】マシン最重要部は自然界からのたまもの。動物園&水族館化する現代F1ワールド

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 レッドブルRB14のバットマンディフューザーに続いてフロアの話で恐縮だが、今回は好調ハースVF-18のフロアフロント部について。写真を見てもわかるとおり、これはもはや、エイのお腹状態。各種のスリットがまるでエイヒレのごとくだ。

 このスリットを使って可能な限りの水……ではなく、ヒレの上面空気流をマシンの床下に引き込むのがその最大の役割だ。このスリットの向きを見れば、その表面を流れる空気流路などが見えてくるし、外に広がる感じは、その上のバージボードの存在を意識させてくれる。

 このフロアフロント部は現在のF1に残されているわずかな自由開発空間で、この空間の出来不出来でマシンのパフォーマンスが左右されるといっても過言ではない。つまり、そのチームの開発陣営、エンジニアの資質がうかがえるのだ。

 フロントタイヤで発生する乱流をこのフロアフロント部で制し、ウイングセンター部からの整流を最大利用し、ウイング後方の渦流を無駄なく、かつ可能な限り床下へ導き、エアロ効率向上に使おうとする努力がなされている。

 実際、エイヒレ部のスリットはほぼエイヒレの表面流にだけ作用し、現実に床下へ引き込めるのはまさにエイヒレ上面の境界層だけに近い。

 そのため、この部分の境界層を上手く処理できれば、境界層のさらに上を流れる空気流にも影響を及ぼし、エアロ効率向上を大きく高めることができる。このエイヒレ部は現在の空力開発の重要な開発ポイントなのだ。

 フロントウイングは猛禽類の翼の曲率と渦流制御から、ノーズ下部にはイカヒレフィン、フロアフロントはエイヒレ、ディフューザーはバットマン、背中にはシャークフィン……近代F1エアロはそもそもが飛行機のウイングであり、そして飛行機の翼は鳥の翼から来ているわけだが、科学が発達した現在のF1は、まさに動物園か水族館にでもいるような……。

 エアロ効率、流体効率は考えれば考えるほど、行き着く先は結局、自然に育まれたエアロを追うことが高効率を得る最大の方法なのかもしれない。