筑波大と電通、経営層向けダイバーシティ修士号で連携

筑波大学と電通は29日、企業の経営層やその候補者を対象に、障がいやジェンダー、民族・文化、世代などのダイバーシティ・インクルージョンに対応できる人材 CDO(Chief Diversity Officer)を育成する修士課程の設置に向けて連携することを発表した。2021年度の設置を目指しており、実現すれば日本で初めてのダイバーシティ・インクルージョンに特化した修士号の誕生となる。 (サステナブル・ブランド ジャパン=橘 亜咲)

筑波大学が新たに設置を目指す修士号はMDA(Master of Diversity Administration : ダイバーシティ・インクルージョン学修士)。同修士課程の新設を決めた背景について、筑波大学ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンターの大園裕香さんは「東京オリ・パラの開催が決まり、2020年の後に何をレガシーとして残せるのか考えた。教育として、本当の意味でのダイバーシティを残す必要がある」と説明する。

筑波大学は、ダイバーシティ・インクルージョンを学問「ダイバーシティ・サイエンス」として確立することで、社会に根付かせていきたい考えだ。

同修士課程では、障がい(Challenges & Disabilities)、ジェンダー(Gender)、民族・文化(Multi-culture)、ジェネレーション(Cross Generation)の4つのテーマを、「商品・サービス開発」「人材・組織マネジメント」「政策」「情報・コミュニケーション」の4つの観点から学ぶ。具体的には、「多様性を強みに変える組織統治」「多様なニーズに対応する新たな市場創造」「性的少数者に関わる諸制度、法的枠組みの整備」「超高速化社会における都市/地方のシステム/インフラの最適化」などのカリキュラムが予定されている。

需要が高まるダイバーシティ・インクルージョン職

同修士課程の受講対象者は、企業のマネジメント層とその候補者だ。「米国で需要が高まるCDOを育成する教育プログラムを目指し、マネジメント層を対象にした」と大園さんは話す。

職場のダイバーシティ・インクルージョンを担う人材の需要は増えている

米国の求人情報検索エンジン「Indeed(インディード)」の調査によると、2017年から2018年の1年間でダイバーシティ・インクルージョンに精通する人材の求人は18%増加しており、過去2年間を見ても増加傾向にある。一方で、ダイバーシティ・インクルージョン職を探す求職者の伸び率は過去2年間で8%と緩やかだという。

筑波大学は電通と連携し、学術的側面だけでなく実学的側面を深化させたい考え。電通は2012年に電通ダイバーシティ・ラボを設立し、ユニバーサルフォントの開発やLGBT調査などを進めてきた。同社は、カリキュラムに必要となる社会動向の把握や企業・行政向けの課題解決のためのソリューション開発において協力する。両者は、活動の認知拡大を目的に、今秋から学生・社会人向けに「障害者スポーツボランティア・リーダー養成講座」などのエクステンション講座を共同実施していく。

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