ひきこもり、孤立の末 母76歳の死体遺棄事件

©株式会社長崎新聞社

 長崎市で8月、母子2人暮らしのアパートで母親=当時(76)=の遺体が見つかり、息子(48)が死体遺棄容疑で長崎署に逮捕された。関係者によると、息子は無職で長年ひきこもり状態だったという。近年、50代のひきこもりと80代の親が社会的に孤立し困窮する「8050(はちまるごーまる)問題」が深刻化している。母子もそれに近い状態だったとみられる。
 「異臭がする」
 8月20日午前。県警に匿名のメールがあった。現場は長崎市上小島2丁目のアパート。駆け付けた警察官が2階の部屋で女性の遺体を見つけた。遺体はごみの山に埋もれるように横たわっていた。県警によると、死因は内因性で、事件性を疑わせる痕跡は見つかっていない。
 長崎署は同日、母親の遺体を自宅に放置したとして死体遺棄容疑で息子を逮捕した。近所の人が7月27日に母親を見掛けており、この日から発見日までの間に死亡したとみられる。息子は「4、5日食事を取らないし、(母親は)やっぱり死んでいたのか。亡くなっていることに気付かなかった」と供述し、容疑を否認しているという。
 住民らによると、息子は父親の死後、定職に就かず母親の年金などで生活していたとみられる。アパートの周りに大量のごみを放置し、近隣住民とトラブルになっていた。行政の支援を受けるよう勧める人もいたが、息子は「よかよか」と拒否。母子は孤立を深めていた。
 76歳の母と48歳の息子。母子も「8050問題」と呼ばれる年代に差し掛かっていた。ひきこもりが長期化すれば親も高齢になる。親の収入が途絶えたり、病気や介護がのしかかると一気に孤立・困窮する。親子で「共倒れ」となるケースが全国で後を絶たない。
 1月、札幌市のアパートで80代の母と50代の娘の遺体が見つかった。母親が先に亡くなり、娘も衰弱死したとみられる。4月には、福岡県福津市の住宅で80代の母親の遺体が発見され、60代の息子が福岡県警に死体遺棄容疑で逮捕された。いずれも子どもはひきこもりで、母親の年金だけが命綱だった。
 県の調査(2016年)によると、県内でひきこもりやその状態にあると疑われる人は715人。40代が162人(22・7%)で最も多く、40代以上が全体の半数を占めた。「8050」世帯の統計はないが、県は「県内でも増えていくと思われる。民生委員・児童委員や保健所と情報共有し、慎重に介入・支援していきたい」とする。
 NPO法人KHJ全国ひきこもり家族会連合会(東京)の上田理香事務局長は「ひきこもり家族が支援受け入れに消極的なケースは少なくない。親が隠そうとするのも理由だが、家族が破綻する前に、行政や地域はアプローチの仕方を工夫して支援につなげる必要がある」と話す。

母子が暮らしていたアパートの周囲には、ごみが散乱していた=長崎市上小島2丁目