コンテンツの閲覧を続けるには、ノアドット株式会社が別途「プライバシーポリシー」に定めるお客様の「アクセスデータ」を取得し、利用することを含む「nor.利用規約」に同意する必要があります。

「これは何?」という方はこちら

構想10年、ドイツの内密出産 子どもへの支援、課題に 熊本大で国際シンポ

©株式会社熊本日日新聞社

内密出産をテーマに、ドイツ政府関係者や研究者、慈恵病院の蓮田健副院長らが意見を交わした国際シンポジウム=熊本大

 妊娠に悩む女性が医療機関で匿名で出産できる「内密出産」について、先に制度化したドイツの事例から内密出産の利点や課題を探る国際シンポジウムが8月22、23の両日、熊本市中央区の熊本大で開かれた。ドイツ政府の担当者や研究者、日本で内密出産の導入を目指す慈恵病院(西区)の蓮田健副院長らが意見を交わしたシンポを詳報する。(松本敦、林田賢一郎、西島宏美)

 ドイツ連邦家族省のユーリア・クリーガー課長は、内密出産を2014年に制度化した背景をこう強調した。

 「困難な状況にある妊婦に、法律に基づいた公的な支援の手を差し伸べる必要があった。安全な医療支援を提供しなければならないことも理由の一つだ」

 ドイツでは、2000年に民間団体が、親が育てられない子どもを匿名でも預かる「ベビークラッペ(赤ちゃんポスト)」を開設。慈恵病院が07年に設置した「こうのとりのゆりかご」は、ベビークラッペをモデルとした経緯がある。

 長年運営されたベビークラッペの問題点としては、(1)預けられた子どもの出自を知る権利を保障できないため、思春期を迎えた子どものアイデンティティー確立に大きな負担となる(2)医療を受けられない状況での出産の危険性-を挙げた。同様の問題は、ゆりかごでも指摘されている。

 クリーガー課長は、内密出産をベビークラッペの代わりではなく、「既存のやり方を拡充するもの」と説明。「内密出産をしたくない、知らないという女性の救いの道として、ベビークラッペは残している。デメリットをはらんでいても、生まれたばかりの子どもが殺害されるような事態があってはならない」と共存させる意義を強調した。

 ドイツには、約1600カ所の妊娠相談所があり、24時間無料で相談を受け付け。移民向けに17カ国語で対応している。広報にも力を入れた結果、15~45歳の女性の8割が相談所の存在を知っているという。

 開設から16年9月までの間に1300人の妊婦が相談。うち26%が子どもと生きる道を選択。15%が既存の制度に沿った養子縁組を選び、20%が内密出産した。残る約4割の妊婦は中絶か赤ちゃんポストなどを選択した。「重要なのは相談を通して3分の2の女性が子どもの利益に配慮した道を選んだこと」とクリーガー課長は訴える。

 20年近く務める相談員の立場から報告したハイケ・ピンネさんは、相談現場の負担の重さを懸念。「ほぼすべての相談で特殊な事情があり、高い専門性が要求されるが、個々の相談員が内密出産と接するケースは少なく、経験を積みづらい実情もある」

 また、内密出産制度ができたことで既存の養子縁組制度につながらなかったケースもある。「1人で出産して子どもを遺棄するような女性には、内密出産を含むどのような支援制度があっても届かない」とも語った。

 構想から約10年を経てドイツで実現した内密出産。今後の課題について、クリーガー課長は「これから出てくる出自を知る子どもたちにいかに付き添い、支援するか。養子縁組のイメージアップも必要だ」と提起した。

 現行法の範囲内で内密出産の実現を目指す慈恵病院の蓮田副院長は「ドイツも走りながら制度を考えている。ドイツのまねではなく、日本の実情にあった内密出産制度導入を急ぎたい」と訴えた。

(2018年9月2日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

こんなニュースも

紙面を彩った火の国球児たち

「夏の甲子園100回」を記念し、熊本出身のスターたちの〝球児〟時代を取り上げます。 第3弾は「打撃の神様」と呼ばれた川上哲治(熊本工出、人吉市出身)です。

ご購入はこちらから

Curated by

Curated by