LGBTパートナーシップ「検討」 神奈川県内は2市のみ

 性的少数者のカップルをパートナーとして公的に認める「パートナーシップ制度」の導入を県内で検討しているのは、神奈川県を含む34自治体のうち2市だったことが、神奈川新聞社の調査で分かった。検討しない理由について「当事者から相談がない」「職員や一般市民の理解が進んでいない」など、消極的な回答が目立った。今後に向けて調査・研究する自治体もあるものの、多様な生き方を尊重する制度に対し、県内自治体の後ろ向きな姿勢が浮き彫りになった。

 「検討している」と回答したのは、横須賀、鎌倉の2市にとどまった。

 横須賀市は、市長が、性的少数者支援団体代表や弁護士、公募の市民らでつくる「市人権施策推進会議」に制度導入を諮問。今月11日から審議を始め、同会議が是とする結論を出せば、早ければ2019年度の導入を目指す。市立病院で手術を受ける際、同意書への署名者として同性のパートナーを認めるなど、市は性的少数者への支援に全国の中でも積極的に取り組んでいる。

 鎌倉市では、市議会が6月、導入に向けた協議を市に働き掛けるよう求める市民からの陳情を採択。市は他自治体の事例を研究し始めた。

 制度の検討とまではいかないが、性的少数者の支援に乗り出している自治体もある。

 県は専門の相談員を当事者らの元に派遣する事業を全国で初めて実施。現在、藤沢市内で開く当事者同士の交流会の開催場所を、19年度以降に拡大することを検討したいとする。

 県内で最も人口が多い横浜市は委託事業として交流スペースを設けているほか、臨床心理士が対面で相談に応じる。川崎市は「当事者の置かれた状況を把握し、障壁を取り除くことが重要」とし、「男」「女」しかない公的書類の性別記載欄を今後、見直す方針だ。

 一方で、多くの自治体が制度導入を「検討していない」と答えた。その理由について「市民からの要望がない」「住民から具体的な相談を受けたことがない」など受け身な回答が目立った。また今後についても「周囲の自治体や世の中の流れを見ながら検討する」といった“横並び”を意識した回答もあった。

 各自治体とも職員向けの研修会や市民向けの講習会で性的少数者への理解を深めようとはしているものの、「まず職員が理解しないと制度創設など次のステップにいけない。理解不足で起こる問題もさまざまあり、慎重に考えなければいけない」と明かす自治体もあった。

 ◆パートナーシップ制度 性的少数者のカップルを結婚に相当するパートナーとして公的に認める制度。日本は先進7カ国(G7)で唯一、法制化していない。自治体レベルでは2015年に東京都渋谷区が初めて導入。現在は全国9自治体(ほかに札幌市、東京都世田谷区、中野区、三重県伊賀市、大阪市、兵庫県宝塚市、福岡市、那覇市)が取り入れ、今年8月には千葉市が導入方針を示した。行政が認証することで、緊急時の病院での面会や賃貸住宅への入居などを行いやすくする。

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