追跡第8弾!ケフィア 被害は1,000億円規模へ、本社では荷物の搬出作業も

 8月31日、消費者庁は(株)ケフィア事業振興会(TSR企業コード:298080745、東京都、以下ケフィア)が「債務の履行遅延」を引き起こしていると注意喚起した。
 同庁は、ケフィアの買戻し契約が満期を迎えながら支払いが遅れている契約者数は少なくとも約2万人、金額は約340億円に及ぶとの見解を示した。
 これから満期を迎えるオーナー制度に加え、ケフィアに金銭を貸し付ける「サポーター募集」でも会員から多額の資金を集めており、被害額は1,000億円に達する可能性もある。
 東京商工リサーチ(TSR)情報部は、これまで7回に及ぶレポートで内容を報じてきた。
 ようやく消費者庁が重い腰を上げ、「債務の履行遅延」の注意喚起を行った。ケフィアの被害者は高齢者が多いと言われる。高齢者などを巻き込む商法に歯止めをかける法整備が急務になっている。

ケフィア本社

ケフィア本社

ケフィア本社 消費者庁の会見と同時刻・・・

 消費者庁が注意喚起の記者発表をしていた8月31日17時。ケフィア本社では従業員が続々と帰路についた。従業員は取材に一切応じず、無言で通り過ぎた。ケフィアの終業時間は17時30分。通常より30分ほど早い。
 その後、本社入口に衝立が置かれ中の様子がうかがえない状態となった。すると大手運送業者のスタッフ数名が訪れ、段ボール箱を台車に載せて運び出した。18時30分、ケフィアビル全館の電気が消えた。消費者庁の会見が終了した直後の18時35分、本社ビル前にマスコミ関係者が集まり始めた。
 携帯電話で話をしながら本社を出てきた従業員は、TSRのカメラをにらむ余裕もみせた。
 休日の土日を過ぎ、営業日の9月3日7時50分、ケフィア本社。1人また1人と本社に従業員が出社し始めた。いずれも取材に対して沈黙を貫いた。契約者も本社を訪れるが、社内には入れてもらえず、警備員と押し問答になる場面もあった。

ケフィア本社前(8月31日17時半過ぎ)

ケフィア本社前(8月31日17時半過ぎ)

被害対策弁護団の被害者向け説明会

 9月2日、都内でケフィアグループ被害対策弁護団が被害者(契約者)向けの説明会を開催した。10時と13時30分の2回開催されたが、いずれも300名を超える出席者で会場は埋まり契約者の関心の高さを物語った。
 被害対策弁護団によると、8月31日時点の相談は全都道府県から1,579件あり、被害金額は計82億8,982万円に及ぶという。
 被害対策弁護団長の紀藤正樹弁護士は、「この事件で自分が出したお金が全額戻ってくることはほとんどない。ケフィアは資産隠しや海外に資産を移転している可能性がある。被害者が結集し、資産保全を図っていく必要がある」と力を込めた。

被害対策弁護団の説明会(9月2日撮影)

被害対策弁護団の説明会(9月2日撮影)

 また、「弁護団の調べではケフィアのグループ会社は約70社あり、実態の究明には外部からでは限界がある。破産の申し立てや刑事事件化することで被害回復と責任追及を進めていきたい」(被害対策弁護団:荻上守生弁護士)と出席した被害者に協力を求めた。
説明会に出席した被害者(女性:70歳代)のひとりは、「TSRのネットニュースをみて被害に気づいた。ケフィアは早く責任を取ってほしい」とケフィアへの怒りをぶつけた。

ケフィアの被害が広がった背景

 被害が拡大した原因のひとつは、ケフィアの「オーナー制度」や「サポーター募集」が預託商法や出資法、金融商品取引商法等をかいくぐり、消費者庁など行政機関がケフィアの資金集めを止められなかったことにある。
 ケフィアは、高利の配当を支払うため、新たな高利の商品を会員に誘い、自転車操業に陥っていた。ケフィアの2017年7月期の売上高は1,004億だが、売上高のほとんどが「オーナー制度」による収入とみられる。これは雪だるま式に契約が膨らんだことを意味し、被害者拡大につながった。
 消費者庁など行政機関はこれらの営業行為を現在の法律で処分するのは難しいようだ。そのため、消費者安全法に基づく注意喚起にとどまり、公表も8月31日と遅れた。
 1年で4回の行政処分を受けたジャパンライフ(株)(TSR企業コード:291624898、東京都)も最終的には債権者が破産を申し立てるまで事業を続けていた。
 日本弁護士会は預託商法の抜本的な法制度の見直しを求める意見書を7月に公表している。資金集め商法を防ぐためにも、消費者保護の新たな基盤整備が急がれる。

 TSRの取材で、ケフィアは「サポーター募集」で集めた資金で運営していた太陽光発電所を担保に提供し、昨年7月から金利15%で20億円を超える資金をソーシャルレンディング会社のmaneo(株)(TSR企業コード:297073834、千代田区)から調達していた。
 被害者への支払いが遅れる一方で、高金利の利払いを続けていた。経営悪化を高利資金で糊塗し、会員外に資金が流出する本末転倒の資金繰りが明らかになった。
 ケフィアの元関係者は、TSRの取材に「自転車操業が続いていた。会社の誰もが高配当を支払い続けることはできないと思っていただろう」と話す。
 ケフィアやグループのかぶちゃん農園(株)(TSR企業コード:296009326、長野県)は、数万人に及ぶ被害者を生んでいることをどう考えているのか。一刻も早く、被害回復に向けた真摯な対応が求められる。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年9月4日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

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