山田哲人、史上初の「40-40」は可能か 山崎武司氏が見る“復活”の理由

ヤクルト・山田哲人【写真:荒川祐史】

昨シーズンの不振から復活「やっぱり山田哲人は山田哲人だった」

 ヤクルトの山田哲人内野手が昨季の不調から復活を遂げ、新たな偉業達成へ突き進んでいる。今季はここまでリーグ13位の打率.311、同4位の30本塁打、同6位の77打点に加え、同1位の30盗塁をマーク。自身3度目のトリプルスリー(打率3割、30本塁打、30盗塁)はほぼ確実となっている。ヤクルトは27試合を残しており、日本球界では史上初の「40-40(40本塁打、40盗塁)」達成への期待も高まっている。

 昨年は自身の不振もあってチームも最下位に沈み、“どん底”を味わった山田。なぜ今年は本来の姿に戻ることができたのか。現役時代に中日、楽天などで通算403本塁打を放ち、2007年には38歳で自身2度目の本塁打王に加えて打点王と「2冠」に輝いた経験を持つ野球解説者の山崎武司氏は、山田の復調の理由を分析し、「まだまだ上積みがある」とさらなる躍動に期待を寄せた。

 2015、16年と史上初の2度のトリプルスリーを達成した山田。しかし、昨季は全143試合に出場したものの、打率.247、24本塁打、78打点と不本意な成績に終わった。以前からその打撃技術を絶賛してきた山崎氏は、不調の要因はシーズン前のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)出場にあったと見ている。

「哲人は2年連続でトリプルスリーを達成したけど、去年はシーズン開幕前に突貫工事でWBCに行って、それが響いて1年間さっぱりダメだった。それは彼も分かってると思うし、やっぱりどんなスーパースター、大打者であっても2月のキャンプがどれだけ大事かと痛感したと思う。そういう部分で(今年は)キャンプをやれば、やっぱり山田哲人は山田哲人だったなというふうに思うよね」

 3月上旬に開幕するWBCに出場する選手は、前倒しで始動するとはいえ、どうしても例年のキャンプのような体作りができず、バットを振り込む時間も十分に確保できない。WBCについては、開催時期を再検討すべきとの声も根強くある。選手のコンディションが大会開幕までに十分に上がらないことに加えて、終了後のシーズンに影響が出る可能性があるからだ。負傷のリスクも含め、レギュラーシーズンに万全で望むために出場を辞退したり、球団からストップがかかるケースはメジャーの選手も少なくない。山田も昨年はWBCの影響で苦しんでいた選手の1人だと山崎氏は見ている。

現役時代、中日や楽天などでプレーした山崎武司氏【写真:岩本健吾】

今季の「40-40」は「大変な数字」も…「来年以降も本当にそれを目標にできる位置にいる」

 しかし、今季は十分に準備を整えてシーズンを迎えた。昨年との打撃の違いは明らかだという。

「見ていて思うのは、今年は打つときのフォロースルーが大きいということ。(昨年)フォロースルーがうまく出なかった理由は、軸足のタメが全くできなかったから。タメようとすると、今度は詰まるという症状が出て、どうしても早くピッチャーの方に向かっていってしまって、体が回らずにフォロースルーが取れないという状況で打っていた。それが今年は解消されてはいる。(打撃の)感覚は(オフに)休めば忘れるもの。ぼんやりと覚えているけど、また(キャンプで)やっていかないと打てないから。(今年は)そういうものをチェックしながらやったのが良かったと思う」

 キャンプからしっかりと下地を作ったことで、昨季の絶不調からは抜け出した。ただ、山崎氏は「まだまだ」という言葉を繰り返す。山田の実力からしたら、もっといい数字を出せるというのだ。

「俺は2年連続トリプルスリーを達成したときの哲人の方が凄かったと思うね。まだまだ本当の哲人じゃない。それでも、あんな数字を出せる。だから、まだまだ伸びしろというか、上積みがあるなと思って見ている。まだ、たまに脆さを見せるからね。一昨年あたりは脆さを全然見せなかった。まだまだ」

 シーズン開幕前、山崎氏は山田について、トリプルスリーに加えて3冠王も狙えるシーズンになると“予言”していた。今季は打率と打点については少し厳しい状況となっているが、山田ならいずれは達成してくれるという期待がある。そして、今季は3冠王よりも希少な“偉業”を成し遂げる可能性がある。日本球界史上初の「40-40」だ。

「やっぱり3冠王を獲りたい気持ちはあるだろうし、獲れるだけのポテンシャルは持っている。あとは『40-40』を哲人も1つの目標にしてるわけだから。十分行ける。現実味のない数字じゃない。彼ならトリプルスリーが普通だな、と思っちゃう(笑)。そうこっちも感じているわけだから。あと30試合くらい。なかなか大変な数字だけど、来年以降も本当にそれを目標にできる位置に彼はいることができる。当然、柳田(ソフトバンク)もそうだし。ひとまず、去年のあのどん底の山田哲人から脱出できたから、良かったんじゃないかなと思う」

 もし今年は届かなくても、山田が史上初の「40-40」プレーヤーとなる可能性は高い。山崎氏はそう見ている。(Full-Count編集部)

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