『1987、ある闘いの真実』 韓国の民主化闘争に基づいたサスペンス

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 日本中がバブル景気に浮かれていた1987年は、今日の韓国社会の礎となった年だった。一人の大学生の拷問死を発端に、国民の軍事政権への不信と怒りがうねりとなって韓国全土に広がっていき、アメリカの介入もあって政府から“民主化宣言”を引き出すに至るのだから。本作は、そんな民主化闘争の実話に基づく社会派映画で、実在した人物も登場する。

 その代表が、拷問死した大学生パク・ジョンチョルと、デモ中に催涙弾が頭部に直撃して亡くなった大学生イ・ハニョル。だが、彼ら民主化を目指す者たちやマスコミだけでなく、軍事政権の手先や政治に興味のない女子大生など、多様な視点から描く群像劇のスタイルが最大限に生かされた作品で、サスペンス映画としても見応えがある。

 ここで描かれていることは、今の日本に直結する問題ではないかもしれない。けれども、わずか30年ほど前にお隣の国で起きた出来事だ。間もなく自民党総裁選が行われ、結果によっては“安倍一強”が加速しかねない中、国民の政治への無関心がいかに怖いかを教えてくれる作品でもあるだけに、見る価値は十分にあるはず。できれば、1980年の光州事件を扱った『タクシー運転手』(公開中)と併せて見てほしい。当時の状況がより把握できるだけでなく、映画としても好対照のタイプだから。★★★★☆(外山真也)

監督:チャン・ジュナン

出演:キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ユ・ヘジン、キム・テリ、カン・ドンウォン

9月8日(土)から全国順次公開

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