アディクション

 専門用語ではアディクションという。本人がやめたいと思っているのに自分の意志でやめることができない依存のこと。ギャンブル、アルコール、薬物、買い物、リストカット…。借金苦や家庭崩壊をもたらすこともある▲そのアディクションをテーマに県立大で開かれた看護関係の学会をのぞいた。アディクションの背景には、本人の生きづらさがあるらしい。他人から理解されにくい何らかの苦しみから一時的に逃れるために、人は何かに依存することがある▲例えば、リストカットの背景には、虐待や親の過剰期待、いじめなどの問題が指摘されている。それらを取り除かなければ、リストカットを止めることはできない▲厚生労働省の推計によると、病的なインターネット依存が疑われる中高生が5年間でほぼ倍増したという。長時間スマホをいじり続けずにはいられない若い心の中には、深刻な悩みが潜んでいるかもしれない▲学会では、依存症は社会がつくるという問題提起もあった。アルコール依存症は酒類が大量流通する時代になって生まれた。ネット依存が問題視されるようになったのは、ネットが社会に普及したからだ▲長らく本人の意志の問題とみなされがちだったアディクション。さまざまな依存に苦しむ人々は、現代社会を映し出してもいる。(泉)

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