【新潟地区・太陽光発電マーケットの展望】〈サカタ製作所社長・坂田匠氏〉小規模、自家消費時代へ 安全・高施工性金具を供給

 このほど、新潟県内で民間資本による県内最大規模のメガソーラー発電施設が竣工した。これまで県営の太陽光発電や民間資本による大規模発電が建設され、架台等の部材に高炉メーカーの高耐食溶融亜鉛めっき鋼板等が多く採用されてきた。買い取り価格が一旦落ち着いたことで、太陽光発電のマーケットも需要環境が変化しつつある。大手建築金具メーカーのサカタ製作所の坂田匠社長に今後の展望を聞いた。

 ソーラー取り付け金物、折板屋根用建築金具製造大手のサカタ製作所(本社・長岡市)の坂田匠社長はメガソーラーの変遷を振り返る。「メガソーラーについては大きさを追求した以前に計画した受注分の遂行はあるものの、新規建設は考えにくい。太陽光発電を小売りに例えるとメガソーラーは巨大ショッピングモール、広大な土地、地の利、幹線道路等インフラが必要だ。これまでメガソーラーにはスケールメリットがあったが、あくまで高いFIT(固定価格買い取り制度)の設定でなければ成立しないモデルだ」。

今後は自家消費の時代

 「今後は地域密着型のスーパーのような規模に以降し、次いでコンビニエンス、宅配サービス並みのレベルにミニマイズされるだろう。需要地まで供給する送電ロスを加味しなければいけないスタイルから、小規模で発電し、発電と消費がとても近くなる。最終的には自家消費する。これが確実視される」

 「独が先行し、次いで米で実現したモデルが2、3年後に日本に入ってくる傾向だ。ゼロエネルギー化は欧州では当然の動き。日本では今まさしくブームに突き進んでいる。日本が環境に対するエネルギーの取り組みで欧米や中国の後塵を拝していることは非常に悔やまれる」

 「今後の太陽光発電普及の可能性は高い。補助金、助成金頼みでは長続きしない。本来はそれを当てにせずともよい低コストエネルギーだ。やっと落ち着いた形で普及している。東日本大震災が発災し、一斉に環境エネルギーに向かった。冷静な判断ができないまま42円という高い買い取り価格を設定し、一時的な過剰ブームが起き、普及速度を早めた点では成功と言えようか。継続的かつ安定的なエネルギーと考えるとこの政策は大失敗だった。そのブームの後、山高ければ、谷深しで多くの企業が需要の戻りについていけず、廃業、撤退してしまうケースがあった」

 「住宅関連は間違いなく太陽光発電設置の比率が上昇するため、市場はかなり良い水準で安定的に推移するだろう。住宅業界では少子・高齢化等で着工数、面積は減少するが太陽光全体の需要としては緩やかに伸びていく形で市場形成していくだろう」

 「どこが伸び代かと言えば、産業用(工場、倉庫など非住宅分野)だ。この分野は住宅向けと比較するとまだ設置率がはるかに少ない。買い取り時には条件があったが、自家消費に制限はなく伸びていくだろう」

非住宅へのこだわり

 「我々は自社の役割をしっかり認識していく。エネルギー事情全体を理解しながら、どのようなポジションで社会貢献できるのか。それはサカタ製作所が最も得意としている分野をしっかりと守ることが重要だ。当社は非住宅の屋根部品メーカーだ。まだ小さい非住宅の太陽光のマーケットを安全に、効率よく施工できる製品を開発、製造し続けいつでも供給できる体制を構築することが当社の使命だ」

 「その部分に徹底的にこだわる企業が1社なければならない。そこにパネルに安全に取りつかなくなってしまう。売上金額としては大きく期待できる分野ではないが、他社に負けず社会貢献できる自負がある」

 坂田社長は「戸建て住宅にとっても自家消費の時代、企業にとっても自家消費の時代」と強調する。

 同社では実際に太陽光パネルを固定する金具や架台の実証試験をどこよりも多く行っている自負がある。検証施設では設置する地盤の耐力を変えている。また雪と同じ荷重の砂袋を乗せたりする。「パネルが破損する限界点まで自社で確認する」。非住宅用のトップメーカーとしてのこだわりを感じる。

社員を評価

 昨年末、経産省の地域未来けん引企業に選定された。坂田社長は「ゼロ残業など働き方改革にも評価いただいている。社長一人の力はいくら頑張っても限度がある。社員一人ひとりの力が必要だ。会社の仕事の優先順位は必ずしも人生の中で一番でなくても良い」。

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