【特集】東京2020大会のリスク対策

 

過去にも起こったテロ

いよいよ2年後に迫った東京オリンピック・パラリンピック競技大会。世界最大の祭典は、夢や感動、大きな経済効果をもたらすだけでなく、世界中の人々が集まることで、さまざまなリスクも併せ持つ。

テロやサイバー攻撃などオリンピックを狙った犯罪に加え、大会期間中の自然災害、熱中症、群衆事故、交通渋滞など、挙げれば枚挙にいとまがない。

オリンピックを狙ったテロは過去に何度か発生している。1972年ミュンヘン五輪では、選手村がパレスチナ系の武闘組織「黒い9月」に襲撃され、選手・コーチら11人、犯人5人が死亡し、警察官1人が殉職する惨事が発生した。

1996年のアトランタ五輪では、開催中に会場近くの公園が爆破され2人が死亡、100人以上が負傷した。2003年に容疑者が逮捕されているが、実行者は同性愛者やユダヤ人、外国人の排斥をとなえる 「アーミー・オブ・ゴッド(神の軍隊)」という準軍事組織グループのメンバーだった。

さらに、アメリカでは2002年のソルトレイクシティ五輪の前年、同時多発テロが発生している。アメリカは国の威信をかけて、ソルトレイクシティオリンピックの成功を誓い、保安活動には、冬季にも関わらず州兵や警察など約1万6000人が動員され、警備費用約3億ドル(約400億円)と当時、過去最大規模の警備体制を敷いた。2014年のソチ五輪では、イスラム過激派グループによるテロを警戒して4万人の兵士や警官による厳重な危機管理体制が敷かれたが、ここまで危機意識が高くなったのも、前年にオリンピックを意識したと思われる路線バスや駅舎の爆破テロ事件が相次いだためだと報じられている。

ちなみに、リオデジャネイロオリンピックではさらにこれらを上回る8万5000人の警備員が動員され、警備不足という新たなリスクを引き起こした。ロンドン、リオ、平昌と、近年のオリンピックでは警備員の確保は大きな課題となっている。脅威が増えればそれだけ警備員が必要になり、その影響は民間施設の警備不足など思わぬ方向に向かう。

一方、サイバー攻撃については、大きな被害は今のところ防げているが、毎回、大会主催者や関連企業に多くの攻撃が仕掛けられていることが報告されている。2012年のロンドン五輪では、サイバー攻撃によって会場を停電させるという脅迫が届き、関係者を震撼させた(実際には攻撃は行われなかった)。リオデジャネイロや、今年の平昌オリンピックでも多くの攻撃があったことが報じられている。

自然災害については、過去のオリンピックで大会期間中に大災害が起きた事例はないが、突風や吹雪など、競技が順延となるような自然現象はいくつも起きている。2008年の北京五輪で開会式が晴天となるよう当局が「人工消雨ロケット弾」を発射したことは記憶に新しい。

災害や渋滞、群衆も懸念材料

また、大会直前に災害や大規模な事故が起きた事例はある。中国では北京五輪が始まるわずか3カ月前に、9万人近い死者・行方不明者を出した四川大地震が起きている。

そして、熱中症。2004年のアテネ五輪女子マラソンでは、酷暑による熱中症のため参加者の約2割が棄権している。日本は過去最高気温の中で競技が行われることになるのかー。サマータイム制を導入すれば、一般国民の体調管理や、ITシステムなどに、別の付加がかかる。

この他、大きな被害は出ていないが、交通渋滞、群衆での事故、通信障害、などさまざまなリスクが考えられる。

では日本では、どのようなリスクに対して、どう備えていけばいいのか。

東京2020大会に向けた危機管理の取り組みをまとめた(写真は建設中の新国立競技場)。

→【特集】「東京2020大会のリスク対策」はこちらから

© 株式会社新建新聞社