デビュー31年目となる沢田知可子のミニ・アルバム。90年代に『会いたい』が大ヒット、00年代に長岡花火に関連した『空を見上げてごらん』を発表し、癒しや復興イベントにも精力的な彼女が本作で取り組んだテーマは“終活”だ。
全6曲の大半は、長年のカップルが登場し、大切な思い出や感謝をつづった穏やかなポップスが並ぶ。Satomiや松井五郎、亜蘭知子など作詞者は全曲分散しているのに、思うことは同じなのかと妙に感心した。いずれも、沢田のまろやかな歌声ゆえに、終わることへの哀しさよりも、終わるまでの喜びが前面に出ている。だからこそ、“おひとりさま”(唯一、前山田健一作詞の『ありがとう さようなら』がそれっぽいが)や、病や介護に立ち向かう人が主人公の楽曲もあれば、沢田の持ち味がいっそう活きる気がした。
DVDの方は、90年のLIVEでの『会いたい』や、30周年記念LIVEでの感極まった『ありがとう』、沢田自身の夫婦愛にあふれた『シアワセの種』を収録、更には原点や転機、今後について語ったインタビューも貴重で、まさにベスト映像集だ。
本作を堪能すれば、自分を支えてくれる誰かの存在をより実感するはず。
(ユニバーサル・CD+DVD 2593円+税)=臼井孝