金属行人(9月5日付)

 先日、新日鉄住金・大阪支社で「災害時の食」をテーマにした防災イベントが行われた。災害時の食事や備蓄について調査・研究・提言している甲南女子大の奥田和子名誉教授が阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨などの被災地でボランティア活動をしながら蓄えてきた知見を紹介した▼結論は「家庭・個人や事業所などがまず、自らの食は自ら備える『自助』が必要」ということ。自治体指定の避難所に行っても即座に炊き出しはなく、配布される食料は相変わらず「食べたくない・おいしくない」ものが多い。被災の恐怖から気持ちを安定化させるためにも食事は大事で、その「食べたい食事」は個人差もあり、自ら備蓄しておくことが肝要という▼新日鉄住金ではその「食べたい災害食」をブリキ缶に詰めて社員に配布した。社員は、3リットルほどの容量の缶に、奥田氏が推薦するアルファ米や野菜スープ、レトルト野菜などを好きなだけ詰めて持ち帰った。それを見て、ブリキ缶の需要が減退する中で、堅牢で多機能なブリキ缶が復活する可能性を感じた▼ペットボトルやアルミ缶に押されているブリキ缶だが、災害食の備蓄用に通販会社などと連携して宅配販売していくことも予想される。

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