がんの治療 根拠ある医療、選び取って

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 がんと告知されて、どのような治療をしていけばいいのか。あふれかえる情報の中、途方にくれる患者さんも多いでしょう。信頼できる正しい情報をどう得るか。抗がん剤治療に詳しい国立病院機構熊本医療センター(熊本市中央区二の丸)の山本春風・腫瘍内科医長に聞きました。(高本文明)

-がんと告知されたら、やはり患者は困惑してしまいます。

 「どんな治療法があるか、治療費は大丈夫か、仕事は続けられるか、どう暮らしていくかなど、今後の見通しがとても心配になられることでしょう。最も良い治療法を知ることが大切です」

-インターネットが普及し、各種メディアにはさまざまな医療に関する情報があふれています。

 「がん治療は、外科手術、抗がん剤、放射線治療に加え、がん免疫治療が登場しています。検索サイトGoogleで調べてみます。英文で『cancer immunotherapy』と入力すると、学会や公的機関が解説しているがん免疫療法のサイトが検索結果の上位に数多く出てきます。しかし、日本語で検索すると、国立がん研究センターのサイトもありますが、その他は、広告や国内外で承認されていない治療が上位に出てきます。日本語検索で正しい情報にたどりつくのは至難の業かもしれません」

-医療に関する番組や記事も数多くが放映、報道されています。

「今年、テレビの人気番組で、ある薬物について、効果があると証明されていないのに、将来的に認可されるような取り上げ方をしたものがありました。また、1999年に岡山大病院が実施した肺がん遺伝子治療は、当時各種メディアでとても大きく報道されました。しかしながら、20年近くたっても承認されておらず、いまだに患者さんには届いていないのです」

-「先進医療」という言葉もよく耳にしますが、誤解されやすいようですね。

 「先進医療は『最新の最も効く医療』と思われやすいですが、まだこれから本当に効果があるかどうかが調べられるものです。具体的には、先進医療とは、保険診療の対象となっていない医薬品、医療機器または再生医療などの製品の使用を伴う先進的な医療技術とされています。厚生労働省が『先進的』と認めた医療技術ではありますが、いまだ保険承認に至っていない医療です。『国も期待しているので先進医療という形で評価をしてください。良い結果が出たら保険承認します』というものです」

-自分にとって良い治療を選ぶためには。

 「根拠ある医療、エビデンス(evidence)の高い情報を選べるようになりましょう。まず、世の中の情報には、誤りや誇張されたものが多いことに十分注意する必要があります。『劇的な』『奇跡的な』『画期的な』といった大げさな枕詞[ことば]を使っている情報は、特に怪しいと考えていいでしょう。『あの方法で治った人もいたらしい』といった、出所不明な情報や個人の経験談は、ほぼ信用できません」

-根拠ある医療とは何ですか。

 「医療は、確率(統計)の世界です。『必ず』と断言することは困難で、100%の正解はありません。いわゆる『効く医療』とは、統計的に効果が高かったと証明された治療です。これを『信頼性の高い治療』と呼んでいます」

 「信頼性の高さを判断する根拠がエビデンスです。治療法の臨床試験にも、ピンからキリまであり、信頼性が高い試験を『エビデンスレベルが高い』、信頼性が低い試験を『エビデンスレベルが低い』と言います。次回は、エビデンスレベルを取り上げ、医療情報が正しいかどうか判断する根拠について紹介しましょう」

(2018年9月5日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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