「6次産業化」で農業持続 海外販売も目指す 西海「大地のいのち」 学校跡地に加工工場

 野菜やかんきつ類の生産を手掛ける西海市西彼町の農業生産法人「大地のいのち」は5月、2013年3月に閉校した崎戸町の市立崎戸中跡地(約3・1ヘクタール)に農産品加工工場を新設した。主力商品の干し芋をはじめ、業務用の調理済み野菜などの製造に取り組んでいる。食品衛生管理の国際規格「HACCP(ハサップ)」を年内にも認証取得し、海外販売も目指す。
 生田智昭社長(40)は「農業は西海市の重要な産業」と強調。だが、高齢化や人口減少で後継者が不足し、耕作放棄地が増えている。地元の農業を持続させるには生産から加工、販売までを手掛ける「6次産業化」を目指している。
 同社は2007年設立、西彼町を中心に、自社農園6ヘクタールでミカンやタマネギ、サツマイモ、サトイモ、キャベツなどを生産している。生田社長は関東からUターンし、5年前に代表となった。市の要望もあり、16年に崎戸中跡地の活用に名乗りを上げた。
 加工工場と保管庫の床面積は約2400平方メートル。県の産炭地域新産業創造等基金の助成を受け建設。旧校舎は耐震補強が必要だったため解体し、新たに工場棟を建設した。体育館は農産品の保管庫として再利用した。空調設備を取り入れ、干し芋などの原料となるサツマイモや、カット済み野菜に加工する根菜類を貯蔵する。温度や湿度を適切に管理すれば、サツマイモは甘みが増し、食味も変化するという。
 稼働後の4カ月で加工したサツマイモは約50トン。県外産が7割を占めたが、生田社長は「県内の協力農家を増やし、地元の産品を地元で加工して、県外に打って出るモデルをつくりたい」と話す。
 加工工場内には野菜のカット、搾汁、乾燥、調理、包装などの作業場がある。ジュースや菓子、総菜などが製造可能という。現在、干し芋類は生協やスーパーに、調理済み野菜は九州の総菜メーカーなどに出荷。材料として使われている。
 完成に伴い新たに35人を雇用。今後、新商品の開発や、OEM生産(相手先ブランドによる生産)も力を入れる。食品の国際展示会にも出展し海外への売り込みを図る。今年の売り上げ見込みは2億円。5年後には10億円を目指す。
 生田社長は「加工により、県内の農産物の価値を高めるとともに、古里の農業を強くしたい。西海市を元気にしたい」と意気込みを語る。

蒸したサツマイモをスライス、乾燥機を使い干し芋を作る従業員=西海市、大地のいのち崎戸工場
加工工場で製造した調理済み野菜や干し芋など

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