台風21号、高炉メーカーに影響 関西圏、一部工場操業停止も

 強い勢力の台風21号が4日、近畿や北陸地方を縦断し、関西圏などに生産拠点を持つ鉄鋼メーカーにも影響が出た。高炉メーカーの製鉄所では強風の影響による設備被害などで生産に支障が出ており、5日午後4時時点で工場操業を一部見合わせているところもある。各社とも生産や出荷の影響を精査する一方、需要家への影響を最小限にとどめるよう対応を急いでいる。

 新日鉄住金は和歌山製鉄所(和歌山市)、名古屋製鉄所(愛知県東海市)で強風などにより一部工程で設備被害が生じており、生産に影響が出ている。

 JFEスチールは西宮ステンレス工場(兵庫県西宮市)で水処理設備が故障し、一部生産設備が停止中。同工場は自動車部品などに使われるステンレスの極薄板や箔、光輝焼鈍製品を月3千トン程度生産している。また、同社の軽量形鋼工場(神戸市)も降雨で電気設備が故障し操業を見合わせている。

 日新製鋼の堺製造所(堺市西区)は、工場の建屋が損傷した一部の生産ラインで調査のため操業を停止。出荷は通常対応しているという。

 神戸製鋼所の製鉄所では生産影響につながる被害はなかった。

 日鉄住金建材は大阪製造所(大阪府高石市)で停電などに伴い生産を一時見合わせたが、5日午後に操業を再開する予定。

 ジェコスは大阪工場(大阪市西淀川区)で停電によるクレーンの停止や転倒があった。全品種の出荷ができる状態に復旧したが、重仮設資材の加工作業再開にはなお時間がかかる見込み。

 ヒロセの大阪工場(大阪市西淀川区)でも停電でクレーンが停止。またエムオーテックの複数の工場で屋根のスレートが飛ぶ被害があったほか、木曽岬工場(三重県木曽岬町)では停電が発生。生産影響を調査中。

電炉操業に支障、鉄筋棒鋼に供給懸念

 台風21号が通過した関西地区では、電炉メーカーの一部にも被害が出た。停電による影響も出ている。商社筋では鉄筋棒鋼の一部で供給不足になるとの見方もある。

 共英製鋼・枚方では製鋼と圧延工場の屋根が強風ではがれ数日間操業停止する。製品出荷は通常通り。中山鋼業も製鋼工場の集塵機フードの一部が強風ではがれたことで、製鋼を数日間休止する。圧延と製品出荷は通常通り。

 岸和田製鋼は工場や製品倉庫など屋根やシャッターの一部が損傷、停電で鉄スクラップ搬入時の重量検査装置が停止した。中山製鋼所では予備品倉庫が一時、高潮で1メートルほど冠水した。

 大阪製鉄も堺工場で高潮による冠水があったが操業に支障はなかった。子会社の日本スチールも停電の影響が出た。

 このほか丸一鋼管は、堺と名古屋の工場で強風による屋根被害などがあったが操業に影響はないという。

流通にも軒並み被害

 合成床板やガードレールを生産しているJFE建材神戸工場(兵庫県神戸市東灘区)では、高潮により工場内が浸水。停電もあり、復旧のめどが立っていない。現在、フォークリフトで荷積みを行い、事務所は自家発電機により業務を行っている。

 大阪南部には数多くの流通が倉庫、工場を構えているが、各社少なからず被害を受けている。暴風による屋根、壁の飛散や停電によるクレーン停止、シャッターの破損により出荷業務ができないところが多い。

 海岸沿いの倉庫では浸水の被害を受けたところもある。

 また同じ地区でも少し場所が違うと被害も異なっている。大阪市住之江区の南港地区では、南港鉄鋼団地は停電で業務を停止しているが、南港シャーリング団地で停電は生じておらず、ほぼ通常業務を行っている。「停電の復旧は一般住居が優先されるようで、工場や倉庫はその後になる。今週中に業務が再開できるかどうか分からない」とする流通もある。

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