液状化防止策は「有効」 熊本市、地下水くみ出し事業化へ

熊本地震で液状化被害を受けた近見地区。市道沿いには建物が解体された跡地も目立つ=熊本市南区

 熊本市は6日、熊本地震で起きた宅地の液状化の再発を防ぐため南区の近見地区で続けていた実証実験を8月末で終え、「有効性が認められる」と判断したことを明らかにした。10月に開かれる専門家の技術検討委員会に実験結果を報告し、異論がなければ正式に事業化する。

 液状化は地下水位が高いほど発生しやすい。近見1丁目ふれあい公園で4月に始めた実験では、鋼矢板を地中に打ち込んで囲った約500平方メートルのエリアの地下水を排水管や電動ポンプでくみ出し、地下水位の変化などを調べていた。

 その結果、実験前に地表から約1・5メートル下にあった地下水位は想定通り約3メートル下まで低下。地盤の沈下も想定範囲内の最大26ミリにとどまった。地盤や模擬家屋の傾きは0・1度以下で、住宅の品質を確保する国の基準に照らして問題はなかったという。

 停電を想定してポンプを10日間止めたり、梅雨の影響も確かめたりしたが、地盤の状況はほぼ変わらなかったといい、市震災土木施設対策課は「データの解析途中だが、近見地区に合った工法と言える」としている。

 市は事業化を決定した後、前提として必要な住民の同意を取りまとめる。早期に同意がまとまれば、来年3月にも工事を発注したい考え。

■住民の合意形成は不透明

 熊本地震で起きた宅地の液状化の再発を防ぐため、熊本市が南区近見地区で続けていた実証実験が終わった。市は「効果が確認できた」として、事業化に向けた手続きを進めたい考え。しかし、再発防止より生活再建を優先させる住民も多く、事業化の前提となる合意形成ができるかどうかは不透明だ。

 近見地区では857戸が液状化被害を受けた。家の傾きを直したり、地盤改良したりする対策を自力で講じた住民がいる一方、被害を受けたままの自宅に住み続ける住民も存在。地区外に転出した住民もいるが、市は実態を把握できていない。

 事業化で活用する国の補助は、1工区が3千平方メートル以上あって工区内に10戸以上あることが要件。対象工区の地権者の3分の2以上の同意が必要だが、住民たちは「合意形成のハードルは低くない」と口をそろえる。

 地区の自治会長らでつくる復興対策協議会が8月末に開いた勉強会では「液状化再発のリスクが相当減る」と事業化に期待する声の一方、「自力で対策を講じた人や高齢者は関心が低い」といった声も。地区内の自治会で会長を務める速水幸さん(70)は「地震直後は市の対策に期待や関心を持つ住民も多かったが、今では濃淡がある」と指摘する。

 住民の一部が自力で対策を講じたのは一日も早く生活を元通りにしたかったためで、自宅と経営する店舗を再建している40代男性は「地震が起きた年ならともかく、今は再建で頭がいっぱい。対応が遅い市の再発防止策について考える余裕はない」。被害を受けたままの自宅に住み続ける住民の中でも再発防止まで思いを巡らす人は少ないという。

 市は独自財源まで投じ、設備維持費も含めて個人負担をゼロにする方針。対策工事の影響で家が傾くなどした場合は損害賠償する考えも示しており、「100パーセントの同意を目指し、丁寧な説明を重ねたい」としている。(猿渡将樹)

(2018年9月7日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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