【小5女児事故死】交差点に潜む危険 横断歩道至近にバス停

 横浜市西区北軽井沢の市道交差点で8月30日、近くに住む小学5年の女児(10)が軽ワゴン車にひかれて死亡した。事故は市営バスから降車した女児が道路を横断しようとした際に発生。現場は停留所と横断歩道が近接しており、ドライバー側の死角になりやすいことから、近隣住民には危険な交差点と認識されていた。死角ができないよう、停留所と横断歩道に一定の間隔を設ける現行の基準も満たしていない。悲惨な輪禍を二度と繰り返すまいと、市交通局は停留所の移設を視野に検討に着手。神奈川県警も同様の交差点の実態把握に乗り出した。

 戸部署によると、事故は同日午後4時20分ごろに発生。現場は信号機のない五差路交差点で、角に停留所がある。女児は外出先からバスで帰宅する途中だった。停留所と横断歩道との間隔は約5メートルと近接。このため、事故当時、縦長で高さのあるバスの車体は横断歩道をまたぐ形で停車していた。女児は降車後、バスの後方を回って横断しようとしたところ、対向車線の軽ワゴン車にひかれたとみられる。

 運転していた自営業の男性(35)は「女児に気付いた時には、ブレーキが間に合わなかった」と供述。現場の制限速度(時速30キロ)を超える「時速35キロぐらいで運転していた」とも話している。

 道交法は、横断歩道を渡ろうとする人の有無が分からない場合、ドライバーに徐行を義務付けている。署幹部は「(軽ワゴン車は)徐行するのを怠った。加えて、停車していたバスが死角になり、横断する女児に気付くのが遅れたのではないか」との見方を示す。

◆基準

 県警によると、これまでにこの交差点で、死亡事故などはなかった。ただ、停留所と横断歩道が近接している形状に加え、近くの渋滞箇所を回避するための抜け道として利用され、交通量は少なくないという。こうした点を踏まえ、市営バスの関係者は「バス停車時には、必然的に対向車にとって死角になりやすく、危ない箇所と認識している運転手はいた」と証言する。

 そもそも、バスの停留所の設置にあたっては、1997年に警察庁と運輸省(当時)が死角をなくすために「信号機のない横断歩道から30メートル離す」「交差点から30メートル離す」などの基準を設けている。

 事故現場の停留所は、この基準を満たしていない。ただ、この停留所は基準ができる前の63年ごろに設置されたとみられ、県警交通規制課は「法的な問題はない」としている。

◆対策

 幼い命が失われた事故を受け、県警や市など関係機関はこの交差点の改良を検討する協議会を近く開催する方針。

 市交通局はこの停留所について、移設を含めた検討を開始したと明かすとともに、管理するすべての停留所2582カ所を点検する方針だ。担当者は「ほとんどの停留所が基準前に設置されたとみられ、問題があれば改善を検討する」としている。事故の直後から、停車しているバスの前後から道路を横断しようとする際の危険性や注意事項を周知する車内放送も始めた。

 県警も県内全域で、停留所と横断歩道が近接している箇所の実態把握を進め、事故防止を徹底する考えだ。

女児を悼み、現場近くに供えられた花や飲み物

© 株式会社神奈川新聞社