波佐見町長選 現職多選の是非 争点に  一瀬候補 町政の“安定感”強調 藤川候補 「魂がない」鋭く批判

 任期満了に伴う東彼波佐見町長選と東彼川棚町長選の投開票が9日に迫った。波佐見町長選には6選を目指す現職、一瀬政太氏(74)=無所属=と、新人で前町議会副議長、藤川法男氏(60)=無所属=が、川棚町長選には3選を目指す現職、山口文夫氏(71)=無所属=と、新人で元町議、毛利喜信氏(43)=無所属=がそれぞれ立候補。いずれも一騎打ちの構図で舌戦を繰り広げている。有権者が選ぶのは町政の「継続」か「刷新」か-。選挙戦終盤の情勢を探った。
 過去2回、無投票が続き、12年ぶりの選挙戦となった波佐見町長選。一瀬政太候補と藤川法男候補が窯業、農業を両輪とする基幹産業振興や交流人口拡大で政策を戦わせるが、もっぱらの争点は、現職多選への是非と見る向きが強い。
 一瀬候補は企業誘致や波佐見焼の知名度アップ、観光客増加など5期20年の実績を挙げ、「追い風に乗り、さらにステップアップしたい」と安定した町政運営の必要性を強調。150近い企業、団体から推薦を取り付け、後援会を中心に組織戦を展開する。青壮年層の支援者が積極的に動き、懸念された12年間のブランクも「あまり感じられない」(陣営幹部)。
 これに対し、自身も兼業農家の藤川候補は、現町政の農業支援策が窯業と比べて不十分と指摘。町内産の農作物のブランド化や農業指導者の民間登用など農業施策に目を配る。選挙戦でも農家が多い町の南、東地区に後援会世話人を置き、優先的に演説会に回るなどして浸透を図る。陣営幹部は「草の根のあいさつ回りが効いてきている」と手応えを口にする。
 こうした相手陣営の動きを察知し、一瀬候補も演説で積極的に農業振興に触れるが、農業関係者からは「国や県の制度に乗っかっているだけだ」と冷ややかな声も聞かれる。一方、藤川候補の演説を聴いた町民は「熱意は伝わるが、今の好調な町政を変える必要性がどれくらいあるのか」と首をかしげる。
 保守系同士の対決で、対立軸が見えにくい中、両陣営とも「最大の争点は現職多選の是非」との認識は一致している。藤川候補は、12年間選挙の“洗礼”を受けていない現町政を「魂が入っていない」と舌鋒(ぜっぽう)鋭い。対する一瀬候補の支持者は「本当の成果はこれから」と力を込めるが、陣営関係者は「『長すぎる』という悪印象だけで、浮動票が流れないか」との警戒感を隠さない。
 両候補とも日中は町内をくまなく選挙カーで回り、夜は複数の地域で演説会を重ねる過密スケジュールで支持拡大に奮闘。欠員に伴う町議補選も同時に実施され、ある町民は「町政を考えるチャンス」と久々の選挙戦を喜ぶ。投票率は「12年ぶりの選挙戦で関心が高まる」「12年間の無投票で若い層の関心が薄い」と見方は分かれるが、両陣営ともおおむね70%前後(2006年の前回は74・84%)と予想している。
 有権者数は1万2389人(男5774、女6615)=3日現在、町選管調べ=。

告示日の出陣式で候補者と気勢を上げる支持者ら=波佐見町

© 株式会社長崎新聞社