「炎で焼かれる兵士」映像も…北朝鮮軍、ミサイル開発で多大な犠牲

米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)は7日、民間の衛星写真を分析した結果として、北朝鮮・平壌近郊にあった大陸間弾道ミサイル(ICBM)組み立て施設が完全に解体されたと報じた。

この組み立て施設は平安南道(ピョンアンナムド)の平城(ピョンソン)に位置する自動車工場内にあった。VOAは「1日時点で、施設があった場所には布らしき物が置かれているだけで、建物や建築資材は全くなかった」と伝えた。VOAによると、7月には施設の解体が進む様子が捕捉され、最新の写真では構造物がそっくり消えた。

北朝鮮の軍幹部にとって、このようなミサイル能力の削減は、非核化同様に複雑な思いを抱かせるものかもしれない。飢えや性的虐待のはびこる北朝鮮軍は、弾道ミサイル部隊や一部のエリート部隊を除き、ほとんど戦力として期待できないからだ。

また、北朝鮮軍は弾道ミサイル技術を完成させるために、多大な犠牲を払ってきた。

北朝鮮は昨年11月、ICBM「火星15」をこの施設で移動式発射台に積んだ後、すぐに発射したとされる。その際、軍の兵士と思しき人物が、エンジンから噴出された火炎に焼かれて死亡したとの情報が出ている。しかも北朝鮮が公開した映像に、その場面が映っていたという。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が北朝鮮国内の複数の情報筋の話として伝えたところでは、北朝鮮の軍内部ではもちろん、テレビでこれを見た人々の間で衝撃が広がったという。

また、北朝鮮は3月22日で弾道ミサイルの発射に失敗した際、発射する前の運搬中か、ミサイルを立てる段階で爆発したとされている。米ジョンズ・ホプキンス大学の北朝鮮分析サイト「38ノース」は、同月28日に撮影された、東海岸の元山(ウォンサン)にある葛麻(カルマ)空港の衛星写真を分析。その結果、ミサイル発射台に向かう2本目の滑走路において、110メートル大の爆発の跡が確認されたのだ。

さらに、2016年10月20日にも、ムスダンと見られる中距離弾道ミサイルの発射実験が失敗に終わっており、このときには直後に起きた火災によって移動発射台が燃えたことがわかっている。いずれも人命被害は確認されていないが、兵士らが犠牲になっていたとしても不思議ではない。

そもそも北朝鮮では、このような人災が繰り返し起きている。

ミサイルの発射実験の場合、それは軍事作戦として行われるので、民間の事故と同様に語るのは的確ではない、との意見もあるかもしれない。しかし、国家の能力不足を国民の生命で埋め合わせているという点において、本質的に同じ問題であると筆者は考える。

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