自殺、被災2~3年後注意 阪神と東日本震災では生活再建段階で増加

©株式会社熊本日日新聞社

「自殺に向かう人は、自分からはサインを出せなくなる。周りが変化に気付き、声を掛けてあげることが望ましい」と話す矢田部裕介医師=6日、熊本市

 10日から全国で自殺予防週間(~16日)が始まる。県内の自殺者数は過去10年、減少傾向にあり、熊本地震後も減っている。しかし、東日本大震災など、過去の被災地では地震から2~3年経過してから自殺者が増加に転じる傾向もあり、関係者は注意を呼び掛けている。

 警察庁の統計によると、2009年に484人だった県内の自殺者数(外国人含む)は、地震があった16年には336人まで減った。17年は287人と過去10年で最も少なく、18年も7月末時点で154人と、前年同時期比で18人の減だ。

 17年の自殺者を男女別で見ると、男性が191人と女性(96人)の2倍近い。年齢別では50代が2割と最も多く、県障がい者支援課は「全国の傾向と同じく、県内でも中高年の男性の自殺が目立つ。仕事や家庭などで問題を一人で抱え込みやすいのではないか」と話す。地域別では人吉・球磨や阿蘇地方で自殺死亡率が高い。

 熊本地震からまもなく2年半。阪神大震災や東日本大震災の被災地では、地震の後は自殺者が減少した。行政やボランティアなど支援者の目が届きやすくなるためとみられている。ただ、被災者が生活再建を進めて新しい環境で暮らし始める段階になると、自殺者が増えたという。同課は「自殺の兆候に気付いて専門機関につなぐ『ゲートキーパー』の養成に力を入れるなど、対策を強化したい」と話す。

 夏休み明けは10代の自殺のリスクも高まるとされる。県精神保健福祉センターは10~14日、心の悩みに対する電話相談の受付時間を午前9時~午後9時と、通常より5時間延長して対応する。TEL096(386)1166。(太路秀紀)

●周囲の声掛け大事に 心理ケアの矢田部医師に聞く 

 自殺の経緯は単純ではなく、防止は簡単ではないが、周囲の人にできることもある。地震被災者の心理ケアにも当たる熊本こころのケアセンター長の矢田部裕介医師(精神科)にポイントを聞いた。(太路秀紀)

 自殺を考える人は無力感や絶望感にとらわれ「現状を抜け出したい、終わらせたい」と感じる。それが「死にたい」という気持ちに変わり、唯一の解決方法だと思い込む。そうなると家族や友人に相談する考えは浮かばなくなり、自分からはサインが出せなくなる。

 だから、周囲が気付いて、声を掛けてあげることが望ましい。

 多くの人は自殺の前に元気がなかったり、趣味をしなくなったりなど「うつ状態」になる。そこから死を考えると、首をつるためのロープを準備したり、飛び降りる場所を探したりするなどの計画段階に移る。そこに「衝動性」が加わることで自殺が起こる。衝動性を高めやすいのがアルコールだ。

 声掛けは、無理に聞き出そうとするのではなく「話があるなら聞くよ」という態度が望ましい。話を聞いて自殺願望が高いと感じた時は、あえて率直に「死のうと思っているの?」と尋ねてみるべきだ。その返答や態度次第では市町村や保健所などの専門機関につないで、見守るのが良い。(談)

(2018年9月8日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

こんなニュースも

紙面を彩った火の国球児たち

「夏の甲子園100回」を記念し、熊本出身のスターたちの〝球児〟時代を取り上げます。 第3弾は「打撃の神様」と呼ばれた川上哲治(熊本工出、人吉市出身)です。

ご購入はこちらから

Curated by

Curated by