【侍U-18代表】連覇が消えた日本、なぜ台湾に負けたのか? その敗因と突きつけられた課題

7日、侍ジャパンU-18代表はチャイニーズ・タイペイを相手に痛い敗戦を喫した【写真:Getty Images】

左腕に抑え込まれた左打線、右投手先発を想定も読み外れる

 大会連覇の夢が潰えた。宮崎市内で行われている「第12回BFA U18アジア選手権」で大会史上初となる2大会連続優勝を狙った侍ジャパンU-18代表は7日、チャイニーズ・タイペイと対戦。わずか2安打しか放てず、1-3で敗戦。オープニングラウンドから引き継がれた韓国戦の1敗を加えて2敗となり、決勝進出の可能性が消滅した。

 点差は2点だったが、内容は完敗だった。2回に先発の柿木蓮(大阪桐蔭)が味方の守備の乱れから先制点を献上。4回に中川卓也(大阪桐蔭)の犠飛で同点に追いついたが、その裏、2番手でマウンドに上がった吉田輝星(金足農)が2死一、二塁から左前適時打、三塁へのセーフティーバントによる適時内野安打で2点を失い、これが決勝点となった。

 打線は台湾の先発左腕ワン・イェンチェンに完全に抑え込まれた。2安打のうち、1本は小園のセーフティーバント、1本は中堅と右翼のお見合いによる野尻の二塁打と、ほぼノーヒットと言えるもの。最大105球の「球数制限」の制限内に収まる、わずか102球での1失点完投を許した。この日、1番で起用された藤原恭大(大阪桐蔭)は「(ワンは)特別すごいボールではなかったんですけど、コースだったり、投球術だったりで、うまくかわされたと思います」と、左腕の投球の印象を語った。

 韓国戦に続く2連敗。なぜ侍ジャパンU-18代表はチャイニーズ・タイペイに敗れたのだろう。

 この日、日本は1番の藤原から、小園海斗(報徳学園)、根尾昂(大阪桐蔭)、野尻幸輝(木更津総合)、中川卓也(大阪桐蔭)、蛭間拓哉(浦和学院)と左打者が6人並んだ。チャイニーズ・タイペイのリ・ライファ監督は試合後、この左打者の多さから、あえて左腕のワンを起用したことを明かしている。野手で右打者は奈良間大己(常葉大菊川)、日置航(日大三)、峯圭汰(創成館)、小泉航平(大阪桐蔭)の4人だけ。メンバー構成でも、左打者に偏っていた。

 しかも、日本サイドの思惑が外れた部分もあった。ある選手は「右のピッチャーか、背番号1の投手だと思っていた。外れました。見てなくても、打たなくちゃいけなかったので力不足です」と語った。日本はこの日の先発を“台湾の大谷”と呼ばれる右腕リ・チェンシュンか、リン・イタと見込み、前日のミーティングでもこの2投手を中心に対策を練っていたようだ。少なからず、その影響はあっただろう。

他国に遅れをとる木製バットへの適応

 今大会で、日本の選手たちが直面したのが、木製バットへの適応だった。甲子園に出場していたメンバーは、つい最近まで金属バットでプレーをしており、大会直前から木製バットを使うようになった。選手たちが口を揃えたのは、やはり、その打球の質の違い。金属バットであれば、少々芯を外しても当てただけである程度飛距離が出る。だが、木製バットでは当てただけでは決して満足のいく飛距離は出ない。しっかりとバットを“振る”ことが必要なのだという。

 今大会、侍ジャパンU-18代表はフライアウトが多かった。鋭い当たりかと思いきや、全く伸びずに平凡なフライで終わる、といった打球が続発していた。ゴロもほとんどが力のない打球。これも、金属バットと木製バットの違いに起因するのではないか。金属バットであれば、外野の頭上を越える打球となっていたのが、木製バットだったことで失速していたのだろう。チームで最も安打を放っている藤原でさえ「飛ばし方があまり分からないですね。ヘッドの抜けるポイントが違う。金属の振り以上のものは出せないですね」と語っていた。

 チャイニーズ・タイペイの選手たちは、日頃から木製バットを使用しており、選手たちから見ても、日本よりも木製バットを振り慣れていると感じたという。昨年のワールドカップも経験している藤原も「台湾も韓国もどちらもしっかりバットを振ってくる。自分たちは当てに行くバッティングをしていた。そこが違いかなと思います。去年もそうですけど、打つ力がない。投手はある程度抑えている。バッター陣が打たないと勝てないというのは誰が見ても分かると思う。まだまだ振る力が足りない。アメリカとかも木のバットなんで、そこの違いもあるんじゃないかなと。バッターの力不足だけなので、まだまだと感じました」と、日本の“課題”を指摘した。

 守備の乱れもあった。チャイニーズ・タイペイ戦の先制点もエラー絡み。韓国戦もエラーが吉田の3ラン被弾につながった。一方で、チャイニーズ・タイペイなどは好守を連発。日本以上の堅実さも見せていた。チャイニーズ・タイペイや韓国を格下だと見る向きもあるが、この大会を見る限り育成年代のレベルは同等以上だった。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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