がん治療に温熱療法併用で効果期待

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温熱療法の有効性について語る片山寛次教授=9月1日、福井県福井市の県国際交流会館

 がん細胞が高温に弱いことを利用した「温熱療法(ハイパーサーミア)」は、抗がん剤、放射線照射、手術などと併用することで、がんの治療効果を高めることが期待されている。日本ハイパーサーミア学会の市民公開講座が9月1日、福井県福井市の県国際交流会館で開かれ、福井大学医学部附属病院(永平寺町)の医師らが治療法と成果を説明。「近年新しく登場し注目されている抗がん剤や免疫療法と温熱療法を組み合わせることで一層効果が高まる。もっと多くの人に知ってほしい」と語った。

 ■がん遺伝子の修復抑制

 がん細胞は酸性度が高く熱の影響を受けやすい。41~43度程度の加温は、抗がん剤や放射線で損傷したがん細胞の遺伝子の修復を抑制し、免疫細胞を活性化させる作用がある。

 温熱療法は、患部が局所的で大きな血管に浸潤しているなど外科手術で切除できないがん、再発がんや転移性のがんが主な対象。日本ハイパーサーミア学会理事長で京都学園大の古倉聡教授は「個人差はあるが、腫瘍を小さくしたり進行速度を抑えたりできる可能性が高まる」と強調した。副作用はほとんどない。ただ、がんが局所的でなく多発していたり、切除できない転移が複数あったりする場合や、ペースメーカー利用者など心臓病のある人らには適さない。また、熱を加えると危険な目と脳には使えない。

 ■保険診療の対象

 治療には専用の加温装置を使用する。台の上に横になった患者を電極板で上下からはさみ、病巣に向けて電磁波を出す。治療時間は40分~1時間。週1回行うのが基本。

 現在は局所的な加温に限って保険診療の対象になっており、食道、直腸などの消化管がん、頭頸部、膵臓、肝臓などさまざまながんに対して実施されている。全国に22の認定施設があり、県内で唯一導入している福井大医学部附属病院では、年間15人がこの療法を受けている。膵臓がんの女性患者(診断時40代)が7年以上生存する例などがあるという。同病院がん診療推進センター長の片山寛次教授は「膵臓がんは、見つかったときに切除不能であるケースが約7割を占める悪性度が高いがんだが、最も温熱療法が効くがん。抗がん剤や放射線照射などの集学的治療との併用で効果を上げる」と話す。

 ■「標準治療の一つに」

 同病院は、がんが腹腔内に広がる腹膜転移に対し、開腹手術時に行う「腹腔内温熱化学療法(HIPEC=ハイペック)」と呼ばれる治療にも取り組んでいる。大腸がん、直腸がんなどの腹膜転移に対し、開腹手術でできるだけ病変を切除した後、切除できない細かいがんをHIPECで治療する。こちらも年間15人前後に実施し、12年間再発のない人がいる。

 欧州の多くの国で標準治療とされ、米国でも治療のガイドラインに掲げられているが、国内では8カ所ほどの限られた施設で行われているだけだ。片山教授は「温熱療法は代替医療と誤解している人もおり、周知はまだまだ不十分。標準治療として認識されるように努めたい」とする。古倉教授は「切除不能の進行がん、再発がんの治療効果や予後を改善することで、がんを高血圧や糖尿病と同じように、病と付き合いながら長く生きる“慢性疾患”として捉えられるようにしたい」と語った。