東鉄連、柏崎刈羽原子力発電所を見学 過去事例教訓にした安全対策に見識深める

 東京鉄鋼販売業連合会(会長・井上憲二明治鋼業社長)は先月29日、新潟県の柏崎刈羽原子力発電所の見学会を開催し、会員会社らから37人が参加。原子力発電の仕組みや、福島第一原子力発電所事故などを教訓にした安全対策への見識を深めた。

 柏崎刈羽原子力発電所は、新潟県柏崎市と刈羽村にまたがる東京電力ホールディングスの原子力発電所。7基の原子炉があり、合計821万2千キロワットの出力があるが、2~4号機は2007年7月に発生した新潟県中越沖地震以降停止中。11年3月の東日本大震災時稼働中であった1、5~7号機も定期検査のため順次停止しており、現在6、7号機が再稼働に向けて国の適合性審査を受けている。

 参加者はまず、所内サービスホール内ビジターズハウスで原子力発電の仕組みや発電所の現況、安全対策などについて説明を受けた。その後バスで移動し、3班に分かれて6号機、7号機の原子炉建屋・タービン建屋などを視察した。

 東日本大震災で発生した福島第一原子力発電所事故では、(1)津波対策(2)電源の復旧・確保、冷却手段の強化(3)炉心損傷後の水素爆発や放射性物質放出防止―といった課題が明らかになった。柏崎刈羽原発ではこれら教訓を基に、原子炉を「止める」、燃料を「冷やす」、放射性物質を「閉じ込める」さまざまな安全対策を講じている。

 発電所の海側には、海抜15メートルの防潮堤を建設。発電所構内の高台には2セットの空冷式ガスタービン発電機車、24台の電源車が常備されている。消防車などの緊急車両基地は南北に配置されており、海抜約45メートルの高台には約2万トンの貯水池がある。一行はこうした設備を車窓から見学した。

 3班に分かれて視察した6号機、7号機の原子炉建屋・タービン建屋では「止める・冷やす・閉じ込める機能の代表的な機器とタービン発電機」などを視察した。

 今回の参加者が一様に驚いていたのが、その厳格なまでのセキュリティー体制。参加申し込みの際にも身分証明書の提出指示などがあったが、場内入場の時にも再度身分証明書を提示。入構時には、各自の入構許可証の確認、危険物の持ち込みが無いよう車両や手荷物の検査が行われる。さらに建屋に入る前には金属探知機など行く先々で関門が待ち構え、個々人が細かいチェックを受けた。操業の安全対策と並び、こうした緻密なセキュリティー機能が、日本の原子力発電所を支えている。

 今回の視察は、事業企画委員会トレンドグループ(実行委員長・岡部耕喜東成鋼管社長)の主催。昨年、別件で同地を見学した岡部実行委員長が中心となり「東京電力管内に職場や住まいがある我々が、電力の供給システムやエネルギー政策の重要性、原子力発電の仕組みを正しく理解する」というコンセプトで企画した。

 今回の見学会に参加した井上会長は「きょうの見学を機にまず電力供給側の現状を知り、我々が今後どう電力やエネルギーと向き合っていくべきかを個々人が考えてほしい」と語った。

 普段入ることができない設備や安全対策の見学、厳格なセキュリティーの経験などで、参加者はより原子力発電についての理解を深めたようだ。

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