スルガ銀行役員に善管注意義務違反、追加損失の可能性も

 9月7日、不正融資問題に揺れるスルガ銀行の第三者委員会(委員長:中村直人弁護士)は調査報告書を公表した。審査書類の改ざんや偽装に多くの行員が関与していたことを認定した上で、岡野光喜・代表取締役会長(7日付で辞任)ら一部役員の善管注意義務違反を認定した。

「過大な業績目標」と「過度のプレッシャー」

 報告書では、シェアハウスを含む個人の不動産関連投資等に特化した「パーソナル・バンク」への業績依存により、審査が機能しなかったと断罪。シェアハウス向け融資では、スルガの一部行員と不動産業者の担当者に癒着があり、当該不動産業者を取引停止にしても、担当者が別法人を設立したり、ほかの不動産業者へ転籍し、「姿形を変えてスルガ銀行の前に現れてくる、いたちごっこの様相を呈してしまった」と結論付けた。 こうした状況は、「過大な業績目標の設定と達成のための過度なプレッシャー」が背景にあるとした。スルガの営業目標は、現場の意見を聴取しないトップダウン方式で作成され、現場の実態が勘案されない営業ノルマになっていたという。第三者委員会の聞き取りに対してスルガ行員は、「釣り堀に魚が10匹いないのに10匹とってこいといわれる状況」と無理難題への胸中を吐露している。

シェアハウスの評価額 平均1.7倍の水増し

 さらに、シェアハウス向け融資127件を抽出し積算法により担保価値を検証した結果、スルガが実施した収益還元法の評価と平均1.7倍の開きがあったという。スルガのシェアハウス関連融資は2018年3月末時点で2,035億円。10日、スルガ銀行は東京商工リサーチの取材に対し、「既にシェアハウス関連融資の全てで積算法による評価替えを実施しており、この点で追加損失を計上することはない。ただ、お客様(債務者)の資産背景やお申し出の状況に変化が生じた場合はこの限りではない」とコメント。さらに追加損失が発生する可能性を否定しなかった。

被害弁護団「全容解明は道半ば」

 スルガ銀行・スマートデイズ被害弁護団は9月7日と9日、都内で会見した。9日の会見で団長の河合弘之弁護士は、「第三者委員会は、不正が発生した原因の究明と改善策の提示が目的で、不正の全容解明は道半ば。スルガとスマートデイズへの言及はされているが、不正スキームの中にある不動産販売会社や建築会社はスコープから外れている」と述べた。

シェアハウスオーナー 約100人の抗議活動

 9月10日午前7時45分より、シェアハウスオーナーら約100名がスルガ銀行東京支店前で抗議活動を実施した。オーナーらは「(シェアハウス問題は)不正融資を垂れ流したスルガ銀行による公害だ。融資を白紙撤回せよ」など、早期の被害回復を訴えた。

抗議するシェアハウスオーナーら(9月10日午前)

抗議するシェアハウスオーナーら(9月10日午前)

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年9月11日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

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