熊本地震で失職…苦しい生活続く 住宅被災に比べ支援手薄 愛娘誕生、食費を節約

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生活保護に関する通知を見つめ、熊本地震で被災した当時を振り返るナカモトさん=熊本市東区

 「自宅は無事だったが、生活は苦しくなるばかりだ」-。熊本市東区のアパートで暮らす男性ナカモトさん(42)=仮名=は、2016年4月の熊本地震の影響で失職し、生活保護を受給した。なんとか新たな職に就いたものの、今も厳しい生活が続く。地震から2年5カ月。地震で職を失った被災者への支援は、住宅被災者に比べて手薄にも思える。

 ナカモトさんが住んでいた中央区の賃貸マンションは数日続いた大きな揺れに耐えて損壊を免れ、知的障害のある妻(30)も無事だった。しかし、勤めていた配送業は地震で仕事が激減。月25万円前後だった収入はほぼ途絶え、自ら退職することを余儀なくされた。わずかな蓄えもすぐに底をついた。親戚たちも被災しており、金銭的援助を頼むことはできなかった。

 地震で住宅に被害を受けた被災者は、行政から仮設住宅が提供されたり、解体・再建資金補助など金銭的支援を受けたりすることができる。しかし、職を失った人への支援メニューは失業給付の特例措置などがあったものの限定的で、ナカモトさんは地震から7カ月後の16年11月から生活保護に頼らざるを得なかった。

 マンションの家賃も払えなくなり、知人を頼って八代市に移り住んだ後、今年6月にようやく仕事が見つかり現在のアパートへ。ただ、新たな運転代行の収入は月12万円程度で、妻も障害を押してパートに出向く。「ぎりぎりの生活で将来の見通しが立たない」。昨年末に授かった一人娘を育てるため食費を切りつめ、身長170センチ超のナカモトさんの体重は50キロまで落ちた。

 ナカモトさんの苦しい生活とは裏腹に、県内の景気は上向きだ。全国的な景気回復や復興需要を受け、有効求人倍率は過去最高を更新。18年度の最低賃金も02年度以降最大の上げ幅だ。経験がある運送業も人手不足が続くが、「妻の体調を考えて近距離の仕事に絞ると、なかなか条件に合う仕事はない」とナカモトさん。

 社会福祉学が専門の尚絅大短期大学部の川崎孝明准教授(44)は「地震による貧困の実情は見えにくい」と指摘する。「行政は仮設住宅に住む人たちだけでなく、広くさまざまな被災者の生活実態を把握する必要がある」と強調する。

 被災者は原則2年とされる仮設住宅の入居期限を順次迎えており、今後は家賃が必要な災害公営住宅などに移ることになる。川崎准教授は「復興需要もいずれは落ち着き、被災者の生活は厳しくなるだろう。問題は深刻だ」と危機感を隠さない。(臼杵大介)

(2018年9月11日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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