スペイン人記者に聞いた日本とスペインの育成の”違い”

スペインで指導する日本人指導者とスペインで指導するスペイン人記者に 日本との育成の違いや、日本とスペインの子ども達の違いを聞いた。それを基に 日本の育成年代が抱える課題を考察!

日本人の子どものテクニックは世界トップクラス!その一方でスペイン人に劣る部分は…?

リーガエスパニョーラの某クラブのカンテラで30年以上指導する某指導者に話を聞いた。最初に、日本人とスペインの人の子どもの違いや優れている点、劣る点について尋ねた。すると「日本人の子ども達の技術は世界でもトップクラスのものを持っていて、スペイン人に勝るレベルだと思う。しかし、スペイン人の子どもより明らかに劣るのは、創造性だ。」そう語った。

そして、同コーチはその理由についてこのように語っている。「スペインでは、練習メニューに子ども達が自身で考えてプレーしなければ上手くいかない要素が組み込まれている。だから、自然に自分達で考えてアイディアを出すことができる環境がある。しかし、日本の子ども達はコーチに言われたことしかできないことが多い。コーチに言われたこと+αで創造性あふれるプレーを見せる点ではスペインの子どものほうが圧倒的に優れている」

私はこの話を受けて、日本の文化や教育がそのままサッカーにも反映されているのではないかと感じた。日本人は真面目でルールを守り、まわりと同じであることを好む。そして、与えられた環境の中でどれだけ結果を出せるかが求められることが多い。

つまり、日本人は1つ与えられたら1つこなし、2つ与えられたら2つこなす。「言われた通りにやれることが正解」とされる日本の文化では、与えられたことをこなすのは得意でも、自分で考えてアイディアを出しながらゴールに向かったり、課題を解決するのは不得意だ。サッカーにしてもそれは映例外ではないようだ。話を聞いた指導者が言うには、コーチに言われたことをやることに一生懸命になりすぎて、言われたことしかできない子ども達が圧倒的に多い」という。

日本サッカーの課題は『実践経験』

次に、現地で指導する某日本人指導者に日本サッカーがスペインやその他の強豪国のレベルに追いつくには、何が必要かを聞いた。すると「リーグ戦を増やすこと」と答えてくれた。スペインでは、育成年代から同国のトップリーグであるリーガエスパニョーラのように1部リーグから2部、3部、その下とリーグ戦が行われ、シーズン中は毎週公式戦があるという。

しかし今の日本では、小学生年代の日本1を決めるJFA全日本U-12サッカー選手権大会(全日本少年大会)をはじめ、多くの大会は予選リーグ以外はトーナメント戦である。最近でこそ、年間を通して行われるリーグ戦が首都圏を中心に行われてはいるものの、まだまだスペインのような構造にはなっていない。

サッカーは「試合感」と呼ばれる試合でしか感じられない要素が大きいスポーツである。そのため、日頃から実戦経験を多く積むことこそが、子ども達の成長につながることが考えられる。

トーナメント戦になると負けたら敗退の一発勝負。緊張感を持たせる意味では良いのかもしれないが、そうなると決勝に進んだチームと1回戦などで敗退したチームとでは、試合数に圧倒的な差が出る。勝ち負けももちろん、大切だが育成年代では勝ち負けよりも、多くの実戦経験を積んで子ども達のレベルアップを図ることのほうが重要ではないだろうか。

いつか日本の育成環境が変わり、日本がワールドカップでスペインを初めとする強豪国を次々と破る日が来ることに期待したい。

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