トヨタ シエンタがマイナーチェンジ|2列シート5人乗りグレードが追加

トヨタ 新型シエンタ

マイナーチェンジの概要

人気ミニバンのシエンタがさらに商品力アップ

最近はミニバンの需要が下がり気味で、車種による販売格差も生じてきた。この競争の中で、売れ筋に位置付けられるのがトヨタ シエンタだ。2018年上半期(1〜6月)は、ミニバンでは日産セレナ、トヨタ ヴォクシーに次いで好調に売れた。

シエンタはトヨタの全店(全国約4900店舗)が扱うから、もともと売れ行きを伸ばしやすいモデルではあるが、商品自体の魅力も強い。

全長が4300mm以下のボディは、トヨタ ヴィッツのようなコンパクトカー並みに運転がしやすい。その一方で、独自の薄型燃料タンクを採用して床を低く抑えた。全高が1700mm以下のコンパクトなボディだが、3列目のシートに座っても膝の持ち上がる窮屈な姿勢にならない。3列目を畳んだ時の荷室も広い。1.5Lエンジンは燃費が優れ、ハイブリッドも選べる。そして価格が200万円前後に収まるグレードがあることも、出費が増えがちなファミリーユーザーには魅力だ。

2列シート5人乗りグレードが新たに追加、燃費も向上

現行シエンタの発売は2015年7月だから、デビューから約3年を経過した。そこで2018年9月11日にマイナーチェンジを実施した。

マイナーチェンジで最も注目されるのは、従来から用意された3列シートの6/7人乗り仕様に加えて、2列シートの5人乗りを加えたことだ。

5人乗り仕様の特徴は荷室の使い勝手が優れる点にある。

また今回の改良では、緊急自動ブレーキを作動できる安全装備は、歩行者の検知が可能になり、ハイブリッドのJC08モード燃費は28.8km/Lに向上するなど、変更点は多岐にわたる。これらの概要を細かく見ていきたい。

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外観デザインの変化

もともとシエンタの外観は、大胆なデザインのフロントマスク、波打つようなボディサイドの形状などに特徴があった。マイナーチェンジでは、斬新でスポーティな感覚を継承しながら、フロントグリルとバンパー、ヘッドランプ、リヤランプ、ホイールキャップの形状を変更して質感を高めている。

2列シート車の「ファンベース」を新たに設定

トヨタ 新型シエンタ FUNBASE(2列シート/5人乗り)

マイナーチェンジでは、2列シートで乗車定員が5名のファンベースが設定された。

2列目を倒すことで、平らな荷室を拡大できる。最大の荷室長は2065mmとされ、後席の左右を両方ともに倒した状態であれば、26インチのマウンテンバイクを2台搭載できる。車内で宿泊する用途にも対応できる。

荷室の両側に、ユーティリティホールを9個ずつ(合計18個)装着したことも特徴だ。日産 キャラバンなどの商用車やスズキ ハスラーのようなレジャー指向の車種に見られる装備で、ディーラーオプションのユーティリティフックやシステムバーを簡単に取り付けられ、荷室を便利に使える。

2列シートのファンベースでは、デッキボードも使いやすい。ボードを反転させることで、ローデッキ(荷室の床面地上高は530mm)とハイデッキ(610mm)に切り換えられる。

ローデッキでは荷室高が1070mmに達して、背の高い荷物も積みやすい。ハイデッキでは、荷室の床面がフラットになり、長い荷物を積んだり車内で宿泊する時に便利だ。

床面は左右に5:5の割合で分割されているから、片側をローデッキ、もう一方をハイデッキにする使い方も可能になる。

トヨタ 新型シエンタ FUNBASE(2列シート/5人乗り)
トヨタ 新型シエンタ FUNBASE(2列シート/5人乗り)
トヨタ 新型シエンタ FUNBASE(2列シート/5人乗り)

安全装備の進化と充実

歩行者検知機能追加&自動ブレーキ、駐車支援の機能アップ

トヨタ 新型シエンタ

シエンタは以前から緊急自動ブレーキを作動できる安全装備のトヨタセーフティセンスを採用してきた。センサーには単眼カメラと赤外線レーザーを使っていたが、歩行者の検知ができなかった。

マイナーチェンジでは、昼間の歩行者検知が可能になり、欠点を解消した。ただし緊急自動ブレーキの作動上限速度は、車両に対しても時速80kmにとどまる(警報は時速140kmまで作動する)。緊急自動ブレーキは、時速100kmまでカバーして欲しい。

超音波センサーを使ったインテリジェントクリアランスソナー(パーキングサポートブレーキ)も設定している。低速、あるいは停車時に作動する緊急自動ブレーキだ。例えばゆっくりと前進/後退しながら車庫入れをしている時、後方の障害物を検知するとブレーキを自動的に作動させる。センサーは前後に各4箇所(合計8箇所)に装着した。

このほかパノラミックビューモニターをオプションで用意した。車両を上から見たような映像として表示したり、ドライバーの死角に入る左右のフェンダー付近を見せることも可能だ。

快適装備の進化と充実

日本初、荷物置き忘れ防止機能を採用

トヨタ 新型シエンタ FUNBASE(2列シート/5人乗り)

スライドドアを電動で開閉させるパワースライドドアには、予約ロック機能が装着された。スライドドアを電動で閉めている最中に施錠の操作をすると、閉まった後で自動的に施錠される。スライドドアが閉まり終わる前に車両を離れることが可能だ。

ただしセキュリティを含めて安全を考えると、離れた位置からでも良いから、閉まったことだけは確認したい。

日本初採用の装備には、後席の荷物の置き忘れを通知するリヤシートリマインダーがある。後席のドアの開閉でシステムが作動し(ここで車両側は荷物を後席に置いたと判断する)、走行後、車両を停車させてイグニッションをオフにすると、マルチインフォメーションディスプレイに荷物置き忘れ防止のメッセージが表示される。

ボディカラーの追加

ボディカラーには、2トーンの6色が新たに用意された。ルーフとピラー(柱)はブラックマイカで、ボディの中央から下側は、レッドマイカ/ホワイトパール/ベージュ/イエロー/ヴィンテージブラウン/グリーンメタリックを選べる。

ベージュはモノトーンについても新色だが、2列シート専用色とされる。

ハイブリッド車の燃費向上

以前のハイブリッドは、JC08モード燃費が27.2km/Lだった。これが改良後は、28.8km/Lになった。2020年度燃費基準プラス50%を達成して、エコカー減税が免税になる。購入して最初に車検を受けた時の自動車重量税も、同様に免税だ。

ウェルキャブ仕様車も同様に改良

車いす仕様車、助手席回転チルトシート車にも、前述の改良を施した(ただし車いす仕様車はインテリジェントクリアランスソナーの設定がない)。

また車いす仕様車では、荷室が使いやすいスロープ前倒れ機能を拡大設定して、全車に標準装着した。

価格とベストグレード

トヨタ 新型シエンタ

3列シート車のグレードは、従来のXと上級のG、2017年8月に特別仕様車として設定されたGクエロがある。これに2列シートのファンベースXとファンベースGが加わった。3列シート車では、ハイブリッドとノーマルエンジンの2WD(前輪駆動)は乗車定員が7名、ノーマルエンジンの4WDは6名になる。

改良前と後で価格を比べると、ほぼ据え置きだ。少し上乗せしたグレードもあるが、それに見合う機能の向上が見られる。競争の激しいカテゴリーでもあるから、実質的に値上げされていない。

2列シートのファンベースは、3列シートの同グレードと比べて3万9960円安い。SUVの3列目シートは7〜15万円くらいだが、シエンタの場合は2列シート車にもユーティリティホールや専用のボードなど独自の機能を装着する。従って価格差があまり開かない。3万9960円ならば妥当だ。

ハイブリッドの価格は、ノーマルエンジンに比べて装備差を補正すると約36万円高い。実用燃費がJC08モードの85%、ガソリン価格が1リッター当たり145円で計算すると(今は150円を超えるが高すぎる)、1km当たりの燃料代はハイブリッドが5.9円、ノーマルエンジンは8.4円だ。そうなると36万円の価格差を約14万kmで取り戻せる。ハイブリッドのエコカー減税を含めて12万kmくらいだ。

コンパクトな車種はノーマルエンジンも燃費が優れるから、ハイブリッドの価格上昇分を燃料代の差額で取り戻しにくい。それでも1年間に1.5万km以上を走るユーザーならば、検討する価値があるだろう。ハイブリッドには、加速感が滑らかになったり、走行音が静かになるメリットもあるからだ。

トヨタ 新型シエンタ FUNBASE(2列シート/5人乗り)

機能的にはX(181万6560円/3列シートの2WD)で十分だが、加えたいオプションも多い。トヨタセーフティセンス(オプティトロンメーターなどとセットで8万1000円)、インテリジェントクリアランスソナー(2万8080円)、サイド&カーテンエアバッグ(4万8600円)、LEDヘッドランプパッケージ(11万6640円)、スマートエントリーパッケージ(3万9960円)、パノラミックビュー対応ナビレディパッケージ(5万7240円)という具合だ。合計すると218万8080円になる。これにディーラーオプションのカーナビを加えた235万円前後が、実質的な車両の価格になるだろう。

さまざまな安全装備が充実するのはとても良いことだから、なるべく積極的に装着して、事故を防いでいただきたい。ただしその分だけ価格が高まるのは避けられない。軽自動車やコンパクトカーが売れ筋になるのは、当然の市場動向だろう。

[Text:渡辺 陽一郎/Photo:トヨタ自動車]

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