東レ、グループのサステナビリティ・ビジョンを策定

東レはこのほど、最新技術や先端材料における強みを生かし、地球規模の課題解決を目指す「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」を策定した。国連が2015年に採択したSDGs(持続可能な開発目標)は、自社の事業活動によって社会課題の解決を図る「アウトサイド・イン」のアプローチを推奨しているが、同社の取り組みも同様の手法と言える。(オルタナ編集部=中島洋樹)

東レ 広報室の担当者によれば、同社は創業以来「社会への奉仕」を中心に据えて事業を行ってきたそうだ。現在の企業理念(わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します)にも、色濃く反映されている。

今回のサステナビリティ・ビジョン策定についても「その延長戦上の取り組みである」と語る。特に期限などは設けず、サステナビリィ(持続可能性)実現に向けて取り組んでいくという。

具体的な内容は、同社が現在進めている、あるいは現在保持している最新技術や先端材料により、地球規模の課題解決を目指すものだ。「2050年に向け東レグループが目指す世界」として以下の通り4つの世界を掲げ、それぞれ具体的な施策をもって取り組みを進めるとしている。

1. 地球規模での温室効果ガスの排出と吸収のバランスが達成された世界

 SDGs 目標 7 :エネルギーをみんなに そしてクリーンに
 SDGs 目標13:気候変動に具体的な対策を

【具体的な施策】
 ・素材の用途を、航空機、自動車などに拡大させ、軽量化による燃費向上でCO2抑制に貢献する。
 ・風力や太陽光など再生エネルギー導入普及を、素材供給により支える。
 ・自社の製造段階で、製造プロセスの改善、再生エネルギー導入、石炭利用の削減などを通じ、CO2削減に積極的に取り組む。

2. 資源が持続可能な形で管理される世界

 SDGs 目標12:つくる責任 つかう責任

【具体的な施策】
 ・自社の技術をもって、非可食である植物資源から作る繊維、バイオ原料・燃料の創生などでバイオ資源の活用化に貢献する。
 ・素材提供を行う企業として、自社製品のリサイクルを促進する。
 ・自社の製造現場で資源の有効活用、リサイクルを進め廃棄物削減に取り組む。

3. 誰もが安全な水・空気を利用し、自然環境が回復した世界

 SDGs 目標 6:安全な水とトイレを世界中に
 SDGs目標14:海の豊かさを守ろう
 SDGs目標15:陸の豊かさも守ろう

【具体的な施策】
 ・水処理技術で、海水淡水化、水質浄化、水の再利用を行い、水不足の解消、環境負荷の低減を目指す。
 ・自社工場での水の再利用、排気・排水の清浄化、化学物質の適正管理などをさらに進める。水資源が貴重な地域においては、一層
  の取水抑制対策を進める。
 ・エアフィルターに素材供給を行い、世界各地できれいな空気の提供を目指す。
 ・水不足などの環境問題への関心を高めるため、小学校を中心として教育支援活動を進める。

4. すべての人が健康で衛生的な生活を送る社会

 SDGs 目標 3 :すべての人に健康と福祉を

【具体的な施策】
 ・先端材料を用いた感染対策衣の提供により、感染症などから人々の健康を守る。
 ・革新技術や先端技術の提供により医療の質を高める。
 ・生体情報をモニタリングする先端衣料、経年により変化する身体機能をサポートする製品の提供などで人々の長寿を支え、クオリ
  ティ・オブ・ライフ(QOL)を高める。

また、2030年に向けた以下の数値目標を掲げている。(数値目標の基準年度はいずれも2013年度)

・グリーンイノベーション製品(地球環境問題や資源・エネルギー問題の解決に貢献する製品)の供給を4倍に拡大する。これにより、
 バリューチェーンへのCO2削減貢献量を8倍に拡大する。【バリューチェーンへのCO2削減貢献量については、製品のバリューチェー
 ンを通じたCO2排出量削減効果を、日本化学工業協会、ICCA(国際化学工業協会協議会)およびWBCSD(持続可能な開発のための経済人
 会議)の化学セクターのガイドラインに従い、同社が独自に算出したもの】

・ライフイノベーション製品(公衆衛生・医療の質の向上、健康・長寿に貢献する製品)の供給を6倍に拡大する。

・水処理膜により新たに創出される年間水処理量を3倍に拡大する。
 【各種水処理膜(RO/UF/MBR)ごとの1日当たりの造水可能量に売上本数を乗じて算出】

・生産活動によるGHG排出量の売上高原単位を、再生可能エネルギーの導入等により、同社グループ全体で30%削減する。
 【日本国内について、パリ協定を踏まえた日本政府目標の産業部門割当(絶対量マイナス7%)を超える削減に取り組む。また、世界
  各国における再生可能エネルギー等のゼロエミッション電源比率の上昇に合わせて、2030年度に同等以上のゼロエミッション電
  源導入を目指す】

・生産活動による用水使用量の売上高原単位を、同社グループ全体で30%削減する。

同社のサステナビリティ・ビジョンは、自社の事業活動によって、社会課題の解決を図る「アウトサイド・イン」であると言えるが、同社広報室の担当者は、「現状にとどまらず、今後も新たな技術・素材の開発をもって、取り組みを拡大し、継続していきたい」と抱負を語った。

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