楽天が地域課題を解決する高校生向け新プログラム

楽天はこのほど、全国各地の高校生が自らの地域課題解決を目指すプログラム「Rakuten IT School NEXT」を始めた。9都道府県10校の高校生137人が楽天社員とともに、高齢化や災害復興など各地域の社会課題に対し、同社のサービスやIT技術を駆使しながら解決を目指す。8月初旬に実施した3日間のワークショップでは、NPOや自治体へのインタビューなど地域との対話を深め解決の道を探った。12月には都内で成果発表会を行う予定。(オルタナ編集部=堀理雄)

同社では2008年から、高校生を対象にインターネットビジネスの実践に取り組む「楽天IT学校」を実施し、これまでにのべ245校・6955人の高校生が受講した。10年間の取り組みを踏まえ、今年からその対象を地域に広げ、課題解決を探る実践プログラムを始めた。

「『地方って面白くない』と感じている高校生も多いが、地域の方との対話を通じて自分たちの街の魅力に気付き、自分たちで面白いことを考えられるんだと実感してもらえたのは大きな成果」

そう話すのは、同社クライアントコミュニケーション部の金井友理さん。自身もファシリテーターとしてプログラムに参加し、高校生とのワークショップを実施した。

ワークショップでは、「相手を知る」ために地域のNPOや自治体職員などに課題についてのインタビューを実施。事前に自分たちが考えていた仮説と突き合わせて本当の課題は何かを探った。その上で、楽天が持つ「楽天Edy」や「ラクマ」など70以上のサービスやIT技術を活用した解決策を考え、プレゼンテーションを通じて共有した。
インタビューで顔の見える関係がつくられることで、高校生からも「一緒に取り組みたい」と積極的にアイディアが出てくるようになった。「富士宮のブランド化」に取り組んだ静岡県立富岳館(ふがくかん)高校の生徒からは「外国人の観光客が多いにもかかわらず、翻訳されている物が少ない」などの意見があった。
一方、地域の大人たちも初めての取り組みで、何を話せばいいのか戸惑う人もいたが、インタビュー終了後は「活動に協力したい」と前向きな声を多くもらったという。
ファシリテーターをつとめた計45人の楽天社員は、社内での募集に応じ自主的に参加した。社員にとっても、自分たちが提供する技術やサービスと社会課題との結びつきを実感する貴重な機会になっているという。

「デジタルリテラシーの高い高校生が増えてきているなか、そうした技術を活用して地域の課題に積極的に取り組む次世代の育成に結び付けたい」と金井さんは述べた。
ワークショップで出された課題解決策については、現在楽天社員との意見交換を通じてブラッシュアップさせている。11月下旬に各高校での校内発表を経て、12月に都内で成果発表会を行う予定だ。
「イノベーションを通じて人々と社会をエンパワメントする」を企業理念とする同社では、多様なステークホルダーとの協働によるSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みに力を入れており、このプログラムもその一環として進められている。

参加校とテーマの一覧。テーマの選定は、楽天社員が各学校の先生に地域課題をヒアリングし、打ち合わせを経て決定した

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