富士山噴火の大量降灰対策 政府作業部会が検討開始

 富士山の大規模噴火で想定される首都圏での広域的な降灰の影響や対策を検討する政府・中央防災会議の作業部会が11日、議論を開始した。江戸を含む広い範囲に大量の火山灰を積もらせた1707年の宝永噴火をベースに、交通機関やライフラインなどが受ける影響の軽減や火山灰の除去といった応急的な対応策のあり方を見いだす。

 委員は、神奈川県温泉地学研究所の萬年一剛主任研究員ら火山分野の専門家や産業関係団体の代表者ら14人。主査に就いた藤井敏嗣・東大名誉教授は「首都圏のような近代都市が火山灰災害に見舞われたことはない。経験のない災害への対処法を考えることになるため、いろいろな分野の知恵が必要だ」と述べた。

 事務局の内閣府などによると、富士山の直近の噴火である宝永噴火は16日間継続し、噴出した火山灰の総量は約17億立法メートル。上空の偏西風に乗り、神奈川はもちろん、約100キロ離れた房総半島にも降り注いだ。農地の被害が各地で相次いだほか、大量の火山灰が流入した酒匂川では水害が多発した。

 富士山の過去の噴火パターンは多様だが、宝永と同様のケースが再来した場合は影響が極めて深刻になることから、おおむね1年かけて検討し、対策を取りまとめることにした。

 降灰による影響は、木造家屋の場合、屋根に30センチ以上積もると降雨時に重みで倒壊する恐れがあり、数センチ程度でも車が通行不能になるとされているが、高度に発達したインフラやライフラインにどのような被害が生じるかは詳しく分かっていない。このため作業部会では、鉄道や航空、船舶などのほか、発電所や上下水道、通信機器や家電製品に生じる被害や影響を具体的に見極める。

 また、火山灰の噴出量や風向きなどの条件が宝永噴火時より厳しいケースについても試算を行う方向だ。

政府・作業部会初会合の冒頭、あいさつする藤井主査=内閣府

© 株式会社神奈川新聞社