ネットを使った広報戦略は今後のスタンダードになる。石破氏を支持する平将明氏インタビュー

9月20日投開票の自民党総裁選がいよいよ本格スタートしました。9月6日に北海道胆振東部地震を受け、選挙戦は3日間の自粛期間がありましたが、9月10日の出馬所見発表を皮切りに論戦が始まっています。

安倍晋三首相と石破茂元幹事長の一騎打ちとなっている状況で、早くも安倍首相の優勢が報じられている状況下で、あえて立候補を選んだ石破氏の思惑はどこにあるのでしょうか? そして、その石破氏を応援する議員たちの思いとは?
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選挙ドットコムでは水月会(石破派)の一員として石破氏を応援する衆議院議員の平将明氏に、石破氏の魅力や応援する理由、ネットを駆使した広報戦略についてインタビューを行いました。

「自由にやらせるが、最後に責任は取る」「自己研鑽を怠らない勉強家」

-選挙ドットコム編集部(以下、選挙ドットコム)
2015年に「水月会」が発足する以前から、石破茂元幹事長と活動を共にされてきた平将明氏ですが、まずは平氏から見た石破氏の「魅力」について教えてください。

-衆議院議員 平将明氏(以下、平氏)
とにかくものすごい勉強家です。全国各地で講演する際には、必ずその地域のいろいろな情報、直近のニュースや膨大なデータをしっかり頭に叩き込み、勉強してから臨むんです。週に3~4回、多ければ毎日講演会があるような状況下で毎回、必ずです。なかなかできることではありません。

-選挙ドットコム
リーダーとして見たときの、石破氏の魅力・強みはどのような点でしょうか?

-平氏
同じ会派の仲間として活動していく中で、私は部下という立場から石破さんを見てきました。私と石破さんとの相性もよいのでしょうが、石破さんを上司として見た場合、とにかく「仕事がやりやすい」相手なんです。

部下に任せた仕事には細かいところで口をはさむことをせず、とにかく見守ってくれます。また下からの提案にも聞く耳を持ち、決して否定しません。「まずはやってみて」と、任せてくれる。それでいて「最後の責任はしっかり自分が引き受けるから」という言動が端々に見える。信頼感・安心感がある人です。だから彼のもとでは仕事が自由にできて、とてもやりやすいんです。

どの業種においても石破さんは「理想の上司」だと思います。私達は政権与党として政策立案を担い、社会に役立つ方策・アイディアを次々に生み出していかなくてはいけない立場ですが、自民党に所属する議員それぞれが、最大のポテンシャルを発揮するために、石破さんは自民党にとって最適のリーダーではないかと思います。

ネット上のハイクオリティな広報戦略で総裁選に挑む。このスタイルこそ、次の参院選・統一地方選のスタンダードに

-選挙ドットコム
総裁選に向けて石破派では、積極的にネットを活用されている印象です。

-平氏
今回の総裁選だけではなく、石破さんの広報は私が率いる「平チーム」が行っているんですが、InstagramやTwitter、総裁選特設サイトなど、様々な取り組みで手ごたえを感じています。自民党の「総裁選」だけでなく、一般的な「選挙」も含んで、ここまでいろんなことをネット上で仕掛けているのは初めてではないでしょうか。

総裁選では、相手は現職の総理大臣・自民党総裁ですから、資金面でも人材面でもやろうと思えば何でもできる。対して私たちはお金も人手もないので、とにかく知恵を絞らないといけません。しかし、だからこそ訴求効果が高く、かつ安価なネットを有効活用できているのだと思います。

-選挙ドットコム
具体的にはどのようなに活用しているのでしょうか?

-平氏
Twitter、Facebook、Instagram、動画サイトなどを連動させるのはもちろんのこと、それぞれのコンテンツのクオリティを高め、スピード感を重視するとともに最適なタイミングを見計らいつつ、発信しています。政治家のネット活用は、「まずはSNSのアカウントを開設して・・・」という段階の方も多いのですが、これからの情報発信は、各コンテンツのレベルをいかに上げるか、クリエイティビティの競争に入っていると考えています。

今後、総裁選も折り返しに近づき、安倍陣営もこちらのやり方を研究して、猛烈に逆襲してくると予想しています。ネット広告も使ってくるかもしれませんが、私たちはお金がないので、ネット広告なんかは打てないんですよ。その分、コンテンツのクオリティで勝負していきます。

他方、「今回の総裁選は激戦ではないから情報発信は積極的に行わない」となるかもしれませんが、安倍陣営にもどんどんネットの活用や情報発信に取り組んで欲しいと思っています。両陣営で切磋琢磨することによって、自民党全体としてノウハウが蓄積されていくわけですから。こうした経験は必ず、来年行われる参院選や統一地方選に活かされるはずなんです。

今回の石破氏のネットでの広報戦略は、これからの選挙のスタンダードになっていくと確信しています。

総裁選は自民党を理解してもらえる最大のチャンス

-平氏
今回の総裁選では、投票資格が「従来の2年間党費を支払った20歳以上」から「1年以上党費を支払った18歳以上」へと、8月下旬に変更されました。もしこの変更が昨年行われていれば、「今、自民党に入党すれば総裁選に投票できます!」と広く知らせることができ、もっともっと総裁選が盛り上がったはずです。非常にもったいないと思います。

党員登録も、今は実験的に私のサイトでネットから申し込みができるようになっていますが、全国にはまだ広がっていません。本当ならこの仕組みも本人確認などのシステムを含め、今回の総裁選前にしっかり作っておいて、ネットから党員を募れるようにしておけば、自民党への注目度・話題性・関心すべてが上がったはずです。

私たちとしては、ぜひとも今回の総裁選を機会に、自民党の発信力が高まり、国民の関心が政治に向くような仕組みづくりを行っていくきっかけになるような広報活動、コンテンツを作っていこうと思っています。

-選挙ドットコム
最後にあらためてお伺いしますが、今回の総裁選において、世間では「逆境」といわれている石破氏をあえて応援するのはなぜでしょうか?

-平氏
もちろん石破さんが党の総裁、日本の総理にふさわしいと考えるからですが、もうひとつには石破氏の立候補自体が「自民党のためになる」と考えているからです。

6年前の総裁選は、自民党の代表を決める選挙でしたが、今回我々は与党ですので、同時に国の代表である総理大臣を選んでいるわけです。政権与党で権力を持っている私たちは、自民党を支持してくれる人はもちろんのこと、そうではない人の意見も丁寧に拾う責務があることを思い出すべきです。ぜひオープンな場で候補者同士が政策についての議論を交わし、選挙を経て代表を選ぶという正々堂々として代表の決め方を全うしていきたいと思います。

-選挙ドットコム
総裁選を通して、自民党への関心、さらには政治全般への関心も高める効果が期待できるということでしょうか?

-平氏
そのとおりです。
海外を見ると、例えばアメリカの大統領選は、国中が熱狂しています。一方で、日本の総理を決める自民党の総裁選はアメリカほどの盛り上がりがあるかと言えば、そうではありません。これは本当にもったいないことだと思います。政策については冷静にしっかりと議論するけれど、それを見る国民がお祭りのように盛り上がることで、自民党や政治そのものへの関心も確実に高まっていくわけです。

私は以前から「AKBのファンクラブ会員になると、選挙でセンターが決められるけど、自民党党員になれば、日本の総理が決められる」と、その魅力を叫び続けています。AKBの総選挙以上に、自民党総裁選が大いに盛り上がることこそ、政治への関心を呼び戻す最大のチャンスです。

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