V・ファーレン長崎 J1残留へ正念場 残り9試合 J2の順位にも注目 降格枠減る可能性も

 サッカーJ1のV・ファーレン長崎が正念場を迎えている。7月以降、10試合で1勝1分け8敗と負けが込み、最下位(18位)に転落。1年でJ2に逆戻りする可能性が出てきた。残り9試合。終盤追い上げてJ1昇格を手にした昨季の快進撃を再現し、県民にもう一度夢を届けてほしい。

 V長崎はここまで25試合を消化し、6勝3分け16敗。最近5試合は0-2(広島)、1-2(鹿島)、0-2(C大阪)、1-5(柏)、1-3(湘南)と黒星が続いている。

 5連敗中は計3得点14失点。得点力不足もさることながら、一度失点してしまうと立て直せず、すぐにまた点を許す。そんな落ち着きのない試合を繰り返している。

 5月の第15節までは5勝2分け8敗と健闘していた。勝てないチームに変わってしまったのには、ワールドカップ(W杯)に伴う5~7月の中断が少なからず影響していそうだ。

 善戦しながらも相手に主導権を握られていた前半戦を受け、V長崎は中断期間を使い、ボール保持率を高めようとした。チームレベルをもう一段階上げるための、攻めの戦術変更だった。

 しかし、リーグ戦が再開していざJ1常連を前にすると実践は難しく、もともと持ち味にしていた「堅守速攻」まで鳴りを潜めるようになった。「次はどう動けばいいのか」。迷いながらプレーする選手たちの出足は鈍り、攻守両面で迫力を欠く。

 それに加え、後半戦は各チームが新参のV長崎を研究。選手層の厚さ、地力の差を見せられ、苦戦を強いられている。

 長い中断で夏の移籍市場が例年以上に活発に動いたことも不利に働いた。V長崎より下位に沈んでいた名古屋、鳥栖などは潤沢な資金を使って有名選手を複数獲得し、順位を上げた。V長崎にも4選手が移籍してきたものの、勝ち点につながる活躍はまだ乏しい。

 とはいえ、まだ9試合が残されている。2017年のJ1残留ラインは勝ち点33、16年は30だった。V長崎の勝ち点は現在21。浮上のチャンスは十分にあるはずだ。

 5連敗となった8月31日の湘南戦後の会見で、高木監督は負け続けることに「まったく慣れない」と悔しがり、闘志が衰えていないことをうかがわせた。現在は第26節のアウェー名古屋戦(9月15日)に向け、試合映像やデータを何度も見返し、緻密な修正を図っている。

 主将の高杉は「前節から2週間空き、チームは一度冷静になれた。もしピッチ上で慌てる選手がいても、10人でしっかりカバーするような戦いをしたい」と決戦のときを見据えている。

 ■J2順位にも注目 降格枠減る可能性も

 JリーグはJ1、J2、J3の三つのカテゴリーに計54クラブが振り分けられていて、年間順位に応じて翌年戦うカテゴリーが決まる。

 J1とJ2の関係では、J1の下位2クラブ(17、18位)はJ2に降格し、J2の1、2位がJ1に昇格。J1の16位はJ2で3~6位だったクラブのトーナメント勝者と入れ替えプレーオフ(PO)を戦う仕組みになっている。

 一方で例外もある。スタジアムや練習場などの条件がJ1基準を満たしていないクラブがJ2の1位もしくは2位に入った場合、J1への昇格枠が一つずつ消滅。それに伴いJ2への降格枠も減る。J1クラブにとっては、ボーダーラインが下がるメリットがある。

 そして今季のJ2で、まさにその例外が起きようとしている。現在首位を走るのは、J1ライセンスを持たない町田。3位とは勝ち点5の差があり、このまま2位以内に食い込めば来季のV長崎の運命を変える可能性がある。終盤戦はJ2の順位争いからも目が離せない。

J1第25節の湘南戦で競り合うV長崎の中村慶(中央左)=長崎県諫早市、トランスコスモススタジアム長崎
J1・J2昇格・降格の条件
V・ファーレン長崎のリーグ戦日程

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