エビデンスレベル 医療情報の信頼性判断

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 信頼できる医療情報を得るために役立つのが、判断する根拠に関わるエビデンスレベルという考え方です。少し難解ですが、患者・家族にとっても、大切な知識です。国立病院機構熊本医療センターの山本春風・腫瘍内科医長(日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医・指導医)に解説してもらいました。(高本文明)

 -医療の情報は、科学的にどう評価しますか。

 「医学に『絶対』『100%』ということはなく、確率、統計的に効果が高い治療を判断する根拠、エビデンスをつくる方法が、ヒトを対象にした臨床試験です」

 -臨床試験にもピンからキリまであるそうですね。

 「キーワードはランダム化比較試験です。これは臨床試験でデータの偏りを避けるため、被験者を無作為(ランダム)に割り付けて治療効果を比較します。公的医療保険が使える医療の多くは、この試験を勝ち抜いてきたものです」

 -どんな方法をとるのですか。

 「試験対象の患者さんをくじ引きで、新しい治療Aを試す群と従来の治療を行う群に分けます。どちらの群かは患者も医師も誰も選べません。試験の結果、新治療Aは患者の6割に効果があり、従来の治療は2割だったとしますと、新治療Aは良い治療と認められ、国からの承認を得て保険で使えるようになります」

 「ランダム化比較試験をパスした治療法は1級品といえます。こうした質の高いデータを複数集めて統合解析し、さらにデータの偏りを限りなく除外したものが、メタ解析です。エビデンスのレベルが最も高い情報です」

 -ランダム化比較以外は。

 「例えば、新しい治療Bを試したいと願う患者さんに漏れなく受けてもらいます。その結果、8割に効果があったとします。しかし、治療Aより値は高くても、比較をしていないので、信頼性は低い結果となります。よって、医師は格上の試験の結果である治療Aを勧めることになります」

 -そもそも有効な新しい治療法が患者に届けられるまでには、どの程度かかるのでしょうか。

 「新薬の開発を見てみましょう。まず、数十万もの候補となる化合物の中から物質を取り上げ、試験管レベルである基礎研究から動物実験を経て、ヒトでの効果を試す臨床試験、国による審査・承認を経て、初めて患者さんの元に届く医療となります。そこに至るまでには、10~20年も試験を繰り返す必要があります。開発費用は数百億円にもなり莫大[ばくだい]です。それでも成功する確率は3万分の1にすぎません」

 -医療機関が公開している治療効果のデータも注意して見る必要がありますね。

 「例えば、『当クリニック独自のがん免疫療法で劇的な効果を示した患者がいる』などとする症例報告や、『この治療の権威である大学教授に聞いた』といった専門家個人の意見、『がんを根治させる可能性のある遺伝子が発見された』といった発表は、エビデンスレベルが最も低い情報でしかありません」

 「また独自のがん治療の結果をホームページで公表している医療機関がありますが、よく見ると都合の良い結果となるよう、多くの症例を意図的に除外した上で、好条件の症例だけを解析した結果であることが多く見受けられます」

 -情報の信頼性を患者自身が正しく捉える必要がありますね。

 「主治医にしっかり話を聞くことが大切です。自分の病状や治癒が目指せるのかどうか、医師が示した治療が自分にどう役に立つのか、明確な根拠、エビデンスがあるかを遠慮なく尋ねましょう。納得できなければ、セカンドオピニオンなどを利用して、他の医師の意見を聞くことも考えましょう」

(2018年9月12日付 熊本日日新聞夕刊掲載)

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