【MLB】大谷翔平の底知れぬ能力 打撃のみの“一刀流”の成績でも新人王有力候補

打者として活躍を続けているエンゼルス・大谷翔平【写真:AP】

日本人選手では4人目の週間MVP複数回受賞

 大谷翔平が、ア・リーグ9月2週目の週間MVP(Players of the Week)を受賞した。週間MVPは、4月1週目に続いて今季2度目の受賞となった。

◯NPB出身の日本人選手の過去の受賞歴

ナ・リーグ1995年6月第4週 野茂英雄(ドジャース)
ナ・リーグ1996年4月第2週 野茂英雄(ドジャース)
ナ・リーグ1996年9月第4週 野茂英雄(ドジャース)※
ア・リーグ2001年4月第1週 野茂英雄(レッドソックス)※
ア・リーグ2001年4月第4週 佐々木主浩(マリナーズ)
ア・リーグ2003年6月第5週 松井秀喜(ヤンキース)
ア・リーグ2004年5月第5週 松井秀喜(ヤンキース)
ア・リーグ2004年8月第2週 イチロー(マリナーズ)
ア・リーグ2005年6月第3週 松井秀喜(ヤンキース)
ア・リーグ2006年6月第1週 イチロー(マリナーズ)
ア・リーグ2007年5月第3週 松坂大輔(レッドソックス)
ア・リーグ2010年9月第4週 イチロー(マリナーズ)
ア・リーグ2011年7月第4週 松井秀喜(アスレチックス)
ア・リーグ2012年9月第4週 イチロー(ヤンキース)
ア・リーグ2015年8月第3週 岩隈久志(マリナーズ)
ナ・リーグ2016年8月第1週 イチロー(マーリンズ)※
ア・リーグ2018年4月第1週 大谷翔平(エンゼルス)
ア・リーグ2018年9月第2週 大谷翔平(エンゼルス)

 シーズンに2回週間MVPを受賞したのは1996年の野茂英雄に次いで2人目。最多はイチローの5回、これに続いて野茂英雄、松井秀喜が4回受賞しているが、大谷は4人目の複数回受賞者となった。

打者に重視される長打力、OPSでは断トツのルーキー1位

 大谷は右ひじの靭帯損傷が再び明らかになり、投手としてはトミー・ジョン手術をする決断を迫られているが、打者としては絶好調だ。

 少し前まで、投手と打者の「合わせ技」での新人王獲得の可能性が話題になっていたが、最近は打者単独でも有力視されるような数字になりつつある。

◯ア・リーグ新人王資格のある打者(本塁打10傑)

アンドゥハー(ヤンキース)
133試511打153安23本79点 率.298 OPS.853

トーレス(ヤンキース)
107試375打104安23本70点 率.280 OPS.845

パルカ(ホワイトソックス)
108試364打87安22本57点 率.239 OPS.763

大谷翔平(エンゼルス)
87試265打77安19本54点 率.291 OPS.960

グッドラム(タイガース)
122試410打97安16本45点 率.236 OPS.742

グズマン(レンジャーズ)
109試348打83安15本56点 率.239 OPS.738

バウアーズ(レイズ)
81試275打53安10本39点 率.193 OPS.691

ドージャー(ロイヤルズ)
88試309打72安9本29点 率.233 OPS.678

アダメス(レイズ)
69試236打62安8本25点 率.263 OPS.729

スタッシ(アストロズ)
81試214打50安8本27点 率.234 OPS.718)

 投手かけもちの上に、6月をほぼ全休した大谷は、打者専業の選手に比べ試合数、打席数が少ない。そのハンデがありながら本塁打数で4位につけている。1位のヤンキース、アンドゥハー、トーレスとは4本差。最近の打者・大谷の充実ぶりを見ると、キャッチアップは十分に可能だ。

 週間MVPもそうだが、MLBでの打者は、長打力が重視される。出塁率+長打率で導き出されるOPSで見れば大谷は断トツの1位だ。DHで守備に就かないことはマイナス評価だが、OPS.960は、非常に魅力的な数字だ。

投手としての数字も優秀

 大谷は、その上に投手としての数字が加算される。

◯ア・リーグ新人王資格のある投手、勝利数10傑

ヤーブロー(レイズ)
34試14勝5敗0S 133.1回 防御率3.78

バリア(エンゼルス)
23試10勝9敗0S 114.2回 防御率3.53

ビーバー(インディアンス)
17試10勝3敗0S 98回 防御率4.32

トリビーノ(アスレチックス)
64試8勝2敗4S 70.1回 防御率2.18

ケラー(ロイヤルズ)
39試8勝6敗 0S 127.1回 防御率3.04

バレスケス(レッドソックス)
41試7勝2敗 0S 76.2回 防御率3.29

ジョンソン(レッドソックス)
35試4勝4敗 0S 88.2回 防御率4.36

大谷翔平(エンゼルス)
10試4勝2敗 0S 51.2回 防御率3.31

アンダーソン(エンゼルス)
53試3勝3敗 4S 52.2回 防御率3.25

ボルッキ(ブルージェイズ)
14試3勝4敗 0S 76回 防御率4.26

シンバー(インディアンス)
63試3勝6敗 0S 61.1回 防御率3.52

 大谷は10試合しか投げていないが、4勝は7位タイだ。防御率も優秀だ。

 数字的に見れば、打者はヤンキース、アンドゥハー、先発投手ではレイズのヤ―ブロー、救援投手ではアスレチックスのトリビーノが有力だ。

 ただ、新人王は数字ではなく記者投票だ。大谷の最近の活躍ぶりは、投票資格のある記者にも魅力的に映っているだろう。

 大谷は残り18試合を、打者としてフル出場すると表明した。この18試合でさらに強烈な打棒を見せることができれば、新人王も現実味を帯びてくるだろう。

 大きなけがなどなく、残りシーズンを戦ってほしいものだ。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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