東海道線新駅、効果は90億円超 神奈川県「実現性十分」

 神奈川県のJR東海道線の大船-藤沢間で検討が進められている「村岡新駅」構想を巡り、新駅整備による効果が年間90億円超になる見通しであることが12日、明らかになった。駅周辺のまちづくり計画は、藤沢市の村岡地区と鎌倉市の深沢地区で一体的に整備する方向が有力とみられ、両市とともに検討を重ねてきた県は「実現性が十分ある」(黒岩祐治知事)と判断。さらに調整を進めて費用負担の早期合意を目指す考えで、新駅実現に向けた動きが加速しそうだ。 

 藤沢・鎌倉両市が2017年度に実施した調査によると、新駅の直接効果として年間64億円が見込めると試算。1日当たりの駅利用者を6万5800人と想定し、所要時間の短縮や交通費の削減を金額換算した。通勤や通学の利便性向上など両市民の恩恵は、ほぼ同等であることも確認した。

 また駅整備による経済効果は、年間29億円になることも判明。地価上昇による固定資産税の増加や人口増に伴う市民税の伸びなどが見込め、藤沢市は年間約13億円、鎌倉市は同16億円の増収となる見通しという。

 このほか村岡・深沢両地区の土地区画整理事業については、それぞれ単独で実施するよりも新駅を核に一体的に整備することで、さまざまな利点があるとの調査結果も明らかになった。事業期間を12年と想定し、工事費などを国庫補助金や土地売却益、市費で賄う計画。両地区を結ぶシンボル道路を含め、道路や宅地などの基盤整備を視野に入れている。

 今後は調査結果を参考に両市と県による費用負担割合の調整を進め、合意を図った上でJR東日本に新駅設置要望を行う予定。その後、概略設計を実施して事業実施の最終判断を下す青写真を描いている。

 ただ、2市にまたがるまちづくり計画を円滑に進めるのは容易ではなく、それぞれ他の施策と絡めた優先度などに温度差もある。新駅の整備費用(自由通路含む)は約160億円とされ、さらに膨らむ可能性もあるという。12日の県議会本会議で知事は「まずは早期合意が重要」と指摘した上で、両市の調整を図って新駅実現につなげていく考えを示した。

 新駅構想は1985年の旧国鉄湘南貨物駅廃止に伴い浮上。周辺では、村岡地区に武田薬品工業が最先端の研究開発拠点を整備、深沢地区では鎌倉市庁舎の移転計画が浮上するなど注目度が高まっている。

村岡新駅構想地の地図

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