長崎空港 高潮対策 今後の課題

 台風21号の影響で高潮による浸水と連絡橋へのタンカー衝突で関西空港が甚大な被害を受けて一時全面閉鎖し、「海上空港」の防災対策の難しさが改めて浮き彫りになった。本県の空の玄関口、長崎空港(大村市)の備えは十分なのだろうか。
 1975年5月に開港した長崎空港は、大村湾内の周囲7キロの箕島を切り崩し埋め立てた世界初の海上空港。空港用地は174万平方メートル、滑走路は3千メートル、幅60メートルで、護岸の高さは平均3・5メートル。本土とは約1キロの連絡橋(箕島大橋)で結ばれている。長崎空港ビルディングによると、1日平均8千~9千人が空港を利用している。仮に千人が孤立しても、1日分の食料や寝具などの備蓄はあるという。
 関西空港は元々、地盤が軟弱だった上、気圧による水位上昇、吹き寄せ、満潮の三つが重なり想定外の事態となった。国交省大阪航空局長崎空港事務所は「大村湾は内海で干満差が激しくない。関西空港に比べても陸地が近く、吹き寄せも考えにくい」とした上で、「高潮対策は特にしていないが、関西空港の状況を踏まえて検討しなればならない」と説明する。また、箕島大橋を管理する県道路維持課は「そもそも航路がないのでタンカーの衝突は想定していない」と認識を示す。
 防災に詳しい長崎大の高橋和雄名誉教授は「関西空港の事例を分析してリスクへのチェックは必要。想定外に備えてさまざまなケースを精査しなければならない」と指摘する。

海上空港として改めて防災対策が検討される長崎空港=2016年3月27日

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