西武・郭俊麟が3年ぶりの勝利を手にできた理由 「何かを変えたかった」

今季初勝利を飾った西武・郭俊麟【写真:荒川祐史】

98球中、ストレートはわずか30球「見せ球として使いました」

■西武 11-5 ソフトバンク(15日・メットライフ)

 西武・辻監督が前日「天王山」と表したソフトバンクとの首位攻防3連戦。その初戦となった15日の先発を任されたのは、台湾から来日して4年目。今年で26歳になる郭俊麟(クォ・ジュンリン)だった。

「勝利へつながる投球をしてくれればいい」と、マウンドへ送り出した辻監督は「たくさんピンチはあったけれども、あそこまで投げてくれた」と試合後、5回0/3、3失点で降板した先発・郭俊麟に一定の評価を与えた。

 今季2度目の1軍マウンドとなった郭俊麟。自身3年ぶりの勝利に「嬉しかった」と喜びを日本語で語ったが、「本当は自分の勝利のことよりも、まずは先発投手としての役割、試合を作れるようにと、毎回意識しながら投げていました」と、チームにとって大事な一戦であることを十分に感じとってのマウンドだった。

 その大事な試合のマウンドで、郭俊麟は「フォアボールを出さないこと」を意識していたという。「ソフトバンクのような打線を相手にフォアボールを出すと、そこから失点につながっていくので、そこを一番意識して投げました」。実際に5回までソフトバンク打線を相手に2失点ながらも無四球ピッチング。その意識が徹底されていたからこその好投だった。

「自分としては3失点までは、納得できる範囲だと思っていました。(先発投手としては)ギリギリの内容だと思います」と、今日の投球について自ら評価したものの、その表情に満足感はなく「本当はもう1、2イニングは投げたかったが、6回を投げ切ることができずそこは残念だった」と、先頭打者に四球を出し、イニング途中交代となったことを悔やんでいた。

登録名の読み方を「カク」から「クォ」へ変更

 その郭俊麟の投球を細かく見てみると、降板までの98球中ストレートが30球に対し、変化球は68球。ストレートの割合が少なかったことに対し「(ストレートは)見せ球として使いました。ソフトバンク打線はストレートへの対応力がいい打者が多いので、長打や大量失点に繋がるリスクがある。(バッテリーを組んだ)森捕手もその考え方は理解していたので、(配球は)2人で組み立てていきました」と、ソフトバンク打線のタイミングを外し、空振りを取れていたその配球意図を明かした。

 そんな郭俊麟だが、今年から登録名の読み方を日本語読みの「カク・シュンリン」から、中国語読みの「クォ・ジュンリン」へ変更。

 その真意をたずねられると「ここまで結果が出ていなかったので、何かを変えたかった。“かく”という読みだと、やはり郭泰源さん(1985-1997西武在籍。通算成績117勝68敗18セーブ 防3.16)を連想させるので、自分は自分自身のピッチングをして、自分自身をアピールしたいと思った」と、「クォ・ジュンリン」という1選手として、結果を残したいという強い決意を語った。

 3年ぶりの勝利について「本当にこの3年間は辛かったが、プロ野球選手として頑張らなきゃいけないという気持ちが強かった。そんな中、今年は同じ台湾出身である許銘傑さんが2軍投手コーチとなり、いろんな指導やアドバイスをいただき、自分のピッチングにとって、大きな力となりました」と、同郷の先輩の助言を糧に、この日を迎えたことに感謝していた。

 結果が残せず苦しい3年間を経てつかんだ1勝。今後のローテは未定だが2週間後、再びメットライフドームでソフトバンクを迎え撃つ試合に再登板する可能性もある。「チャンスがあるならば、自分のピッチングをきちんとしたい。ストライク率を上げ、早いカウントで打者と勝負ができるようにしたいし、試合を作って長いイニングを投げられるように心がけたい。」と語り、「自分が自信をもって投げられるボールも増えたので、どんな相手でも自分の準備をきちんとして、『最高の自分』を出したい」と、次回登板へ向けてのの気持ちを口にしたその瞳には、力強さが宿っているように感じられた。(岩国誠 / Makoto Iwakuni)

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