コラム凡語:現場からの声

 「協会の方がすごく恐怖で、パワハラと感じた」。体操の宮川紗江選手と日本協会幹部の騒動が続いている。内輪もめに映るかもしれないが、彼女にとっては選手生命をかけた訴えだ▼10代の選手には巨大な相手と言える。「ムーンサルト」の塚原光男副会長は五輪金メダル5個の英雄。妻の千恵子女子強化本部長も元五輪選手だ。一歩間違えば競技を続けられなくなることも覚悟の上だろう▼結果が明快に出るスポーツ界では実績を残した人物の声が大きくなるケースが実に多い。日本ボクシング連盟会長だった山根明氏は長く日本代表監督を務めた。パワハラ辞任したレスリングの栄和人氏も強化本部長として君臨した。経歴と実績が周囲の大人を黙らせる▼一方で、個性的な「師匠」と才能ある「弟子」のコンビで世界を席巻したケースは数え切れない。絆の深さは戦う武器になるが他者が介在できない危うさも伴う。噴出するスポーツ問題の大半は指導をめぐるトラブルだ▼海外に比べて自己主張する選手が少ないとされる日本。異を唱える選手が続々と出てきたことは歓迎したい。踏み込んだ現場からの発言は役員、指導者に意識改革を促す▼だが名指しで相手を批判する以上、選手も責任を問われる。リスクを背負って語る言葉を冷静に聞き分けたい。

[京都新聞 2018年09月16日掲載]

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