《ニュース最前線》中高年の健康増進 運動機会 提供に知恵

県レクリエーション大会でダンスを披露する参加者=1日、ALSOKぐんま総合スポーツセンター

 高齢化が急速に進む中で、健康寿命を延伸させる生涯スポーツが注目されている。軽スポーツを楽しみにしている高齢者は少なくなく、右肩上がりの医療費を抑制する効果も期待されている。

 ただ、本県では運動する習慣が身に付いている高齢者の割合は低いのが実情だ。県が2016年に実施した調査によると、運動を週2回以上継続して行っている65歳以上の割合は36%で全国平均を6ポイント下回っていた。

 高齢者が気軽に体を動かせるようにと県内各地に設置されている地域総合型スポーツクラブの中には指導者不足や活動場所の確保などに悩んでいるところもある。

 中高年に運動する機会を提供しようと、奮闘している関係者を取材した。

◎集い 体動かす場を

 9月のある日曜日。太田宝泉小の体育館に元気な声が響いた。太田市の宝泉地区を中心に活動する総合型地域スポーツクラブ「健康夢友クラブ」のエアロビック教室だ。30人ほどの女性が約1時間、音楽に合わせて汗を流した。14年前から通う浅井タケコさん(76)は「家ではなかなか体を動かせないけれど、ここに来れば運動できる。80歳を超えても通い続けたい」と笑った。

クラブ設置進まず

 クラブは中高年の健康寿命を延ばそうと、金井節男代表が6年前に立ち上げた。現在の会員数は約200人。大半が60歳以上の高齢者だ。エアロビックのほか、だんべえ踊りや健康吹き矢など11の教室を開く。運動場所の確保にも工夫し、市内に葬儀場を持つ日典ラサから、葬儀が行われない友引の日に部屋を借りている。

 今春からはより多くの高齢者に参加してもらおうと、市内の老人クラブにも働き掛けている。会員を派遣して行うボッチャやペタンクなどの体験会は好評だ。金井代表は「老人クラブの活動が減っている中で、新たな集まりの場になればいい」と話す。

 多世代、多種目、住民主体で運営が行われる総合型地域スポーツクラブは、2000年に国が定めた「スポーツ振興基本計画」に基づき、本県でも設置が進んだ。現在、25市町村に計43のクラブがあり、高齢者のスポーツ参加に大きな役割を果たしている。

 スポーツ庁は各自治体への設置を推進しているものの、本県では10市町村で未設置。今年6月には、指導者や活動場所の不足を理由に玉村町で唯一だった「たまむらスポーツクラブ」が活動を休止した。県スポーツ協会はアドバイザー制度を設け、クラブ設立の助言や現状の課題のヒアリング、研修会なども行う。しかし、協会の小林秀光アドバイザーは「運営者や指導者にも高齢化の波が来ている。後継者がおらず、運営が困難なクラブは他にもある」と閉塞(へいそく)感を口にする。

自主活動を支援

 総合型地域スポーツクラブとは別の切り口で、住民の活動を支援する自治体もある。中之条町の中央公民館が主導する「中之条大学」はヨガや軽体操など、軽スポーツを含めた幅広い講座を開催する。趣味や特技を持つ町民が「教授」となり、新たな講座を開講することも推進している。

 新たに活動を始める団体には会場の借り方を助言するなどして立ち上げをサポート。自主的な活動の継続につなげたい考えだ。公民館の外丸綾子係長は「やりたいことは何でもできる。受け身にならず自分から積極的に始めてほしい」と話す。

 「健康のために適度な運動が重要だと、個人が気付くことが大切」と指摘するのは県レクリエーション協会の稲山宏一理事長。同協会は、年に1度の県スポーツレクリエーション大会や体験会などを通して軽スポーツの普及に励む。

 高齢者との接点をより増やすため、気軽に運動を体験できる「健康スポレクひろば」の開催を模索している。スポレクひろばは3年前、全国的にスタートした取り組み。ストローを使った肺活量診断など手軽な体チェックや健康講座、軽スポーツを通して、健康への効果を「自分事」と認知してもらい、運動の習慣化を促すのが狙いだ。

資格10人のみ

 今年は9月までに全国56地区で実施されたものの、本県では指導者不足や会場確保などがネックとなり、開催の見通しが立っていない。中心となるのは日本協会が定めた「スポーツ・レクリエーション指導者」の資格取得者だが、県内の取得者はわずか10人。稲山理事長は「以前は福祉学科の学生らが受講していたが、近年はその数が大きく減った」と打ち明ける。

 実施会場は公民館や市民サロンなどが想定されるため、行政機関との連携も重要になる。運動習慣のきっかけになる場としての期待がかかるだけに、「各市町村に積極的に働き掛け、早期の開始にこぎ着けたい」としている。

◎1日8000歩 目安

 歩くことは簡単に始められる身近な健康法だろう。だが、歩く速度や歩数はどのくらいが適切なのか。東京都健康長寿医療センター研究所の青柳幸利さん(中之条町出身)が、一つの指標を提唱している。

 「1年の1日平均歩数が8000歩以上かつ、その人にとっての中程度活動(会話はできるが、歌うことはできないぐらいの早歩き)時間が20分以上含まれていること」が最も効果的とする。

 中之条町の65歳以上の5000人を対象に、日常の身体活動と病気予防の関係について2000年以降、継続的に行っている「中之条研究」から導き出した。健康増進・維持、健康寿命の延伸のためには、多く歩くだけでは十分な効果が得られず、歩く質(強度)が重要。中強度の活動時間が増えるごとに認知症、うつ病、骨粗しょう症、脳卒中など11の病気予防に効果が望めるという。

 一方で過度な運動は逆効果と指摘。病気の予防効果は、1日1万2000歩・中強度活動時間40分が頭打ちで、過度な運動はストレスの原因となり、免疫を下げるリスクがあるとしている。

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